研究課題
本研究は重力崩壊型超新星爆発のニュートリノ加熱メカニズム仮説を調べるために、球座標一般相対論的ボルツマン輻射流体コードを開発し、超新星シミュレーションに応用することを目的としている。初年度では、球座標数値相対論コードの開発とそれをボルツマン輻射流体コードに結合することを計画しており、実際に球座標数値相対論コードの開発には成功した。このコードは、少なくとも真空解は精度良く解けることを確かめてある。これは最終目的であるコードの中核をなす重要なパーツとなる。また、アインシュタイン方程式は拘束系であるため数値相対論コードの初期条件生成は非自明な問題であり、超新星爆発シミュレーションの初期条件を拘束条件を満たすように構成する初期条件生成コードも開発した。これによって、コードを一般相対論化する準備は整ったと言える。また、コード開発と並行して、一般相対論効果を浮き彫りにするためにニュートン的重力のもとでのボルツマン輻射流体コードによる超新星爆発シミュレーションも行う計画であった。この目的のため、比較的速い自転速度を持つ星の重力崩壊、およびそのコアバウンス後の進化までのシミュレーションを行った。このシミュレーションでは爆発は起こらなかったが、特に自転によるビーミング効果がニュートリノ分布に与える影響を定量的に見積もり、また、先行研究で用いられていたニュートリノ輸送の近似法ではニュートリノ分布の四重極変形を最大で20%程度過大評価することを指摘した。これはニュートリノ輸送を近似なしに行う本研究でのみ可能な評価であり、将来的に精度を高めた新しい近似法の提案に利用できる可能性がある重要な指摘である。さらに、こうして一般相対論的シミュレーションと比較するための対照実験にあたるシミュレーションが準備できたことになる。
2: おおむね順調に進展している
一般相対論的ボルツマン輻射流体シミュレーションを行い、超新星爆発メカニズムに迫るという観点からは概ね順調に進展していると言える。計画の一つであった、一般相対論的シミュレーションと比較するためのニュートン的シミュレーションを実行するという部分に関しては、予定通りに問題なく進められている。コード開発の部分に関しては当初の研究計画通りに進んでいるとは言い切れないが、計画の最重要部分である数値相対論コードの開発は問題なく完了した。コード全体を統合する部分は完了してはいないが、これは初期条件の生成に当初よりも時間をかける必要が出てきたためであり、この部分を飛ばしては数値計算を行うこと自体ができなくなってしまう。それゆえ、必要なコードを着実に開発していっているという意味では、概ね順調に進展していると言えよう。
平成29年度に引き続き、一般相対論的ボルツマン輻射流体コードの開発を進める。開発した数値相対論コードと、既にニュートン的シミュレーションにも利用したボルツマン輻射流体コードとを統合することで、目的のコードを開発する予定である。この部分を性急に進めてバグの多いコードになってしまっては意味がないので、問題の生じやすい部分に関しては共同研究者と議論を重ねつつ、慎重に開発していく予定である。コードが完成次第、超新星爆発シミュレーションを実行し結果を論文にまとめる。その一方で、平成29年度に行ったニュートン的シミュレーションにおいては多くの興味深い現象が見つかっており、さらに詳細な解析をおこなえばその物理的な起源、および超新星爆発に与える影響を調べることができると考えられる。ここで詳しく調べておくことは、将来的に一般相対論的シミュレーションと比較する際にも重要な知見を多く与えてくれるため、早い内に解析を遂行する必要性がある。ゆえに、平成30年度もある程度はコード開発及びシミュレーションと並行して、この解析にも時間を割く予定である。
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The Astrophysical Journal
巻: 854 ページ: 136~136
10.3847/1538-4357/aaac29