研究課題/領域番号 |
17J04445
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
鎌田 慎 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
|
キーワード | 熱物性 / 熱工学 / 拡散係数 / マイクロ熱流体 / マイクロ・ナノデバイス / MEMS / レーザー誘起誘電泳動 / 光導電膜 |
研究実績の概要 |
本研究では,拡散係数に基づくナノサイズ生体高分子解析の有意性に着目し,拡散係数測定によるバイオ分析プラットフォームの構築を目指す.そのために,光照射領域へナノ粒子を駆動する技術であるレーザー誘起誘電泳動を用いた,拡散係数測定デバイスを開発し,さらに高機能なマイクロ熱流体チップとして発展させる.平成29年度は以下に示す成果を得た. 1.測定デバイスデザインと作製:生体試料測定を実現する高感度なデバイス作製に向けて,デバイスを構成する光導電膜(水素化アモルファスシリコン)の反応性RFマグネトロンスパッタ法による成膜条件探索と,成膜した薄膜の構造や光学・電気特性の評価を行った.得られた評価結果に基づく有限要素解析から測定流路をデザインし,測定デバイスを作製した. 2.作製デバイスを用いた拡散係数測定:作製した測定デバイスにおいて,ナノビーズ試料を数秒以内という短時間に測定し,ナノサイズ試料の拡散係数測定手法として妥当であることを確認した.加えて,生体適合性デバイスの実現に向けた化学的表面修飾方法の開発や,タンパク質など生体試料を用いた予備的実験にも取り組み,今後の生体試料を用いた測定に向けた知見を得た. 3.流体操作システムの構築:計画していた通り,電磁弁やそれを制御する入出力モジュール,プログラムを導入し,マイクロ流路における流体操作システムを構築した.これを測定デバイスに接続し,これらの動作確認のみならず,数分間で複数種類の試料を用いて拡散係数を連続的に測定する予備的な実験にも至った.また,マイクロ流体デバイスの開発についてはフランス・グルノーブルに設置された原子力・代替エネルギー庁の研究施設へ赴き,ナノ・マイクロデバイス研究開発現場を見学し,マイクロ流体デバイス研究者と討論し,今後分析プラットフォームへと発展させる上で有益な知見を得た.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画していた通り,生体試料測定を実現するデバイス作製に向けて,光導電膜の成膜条件の探索とその特性評価を行った.さらに,評価結果に基づく有限要素解析から測定流路の作製条件を決定し,実際に作製したデバイスを用いてナノビーズ分散液試料を測定した.また,作製したデバイスにおいてタンパク質等生体試料における実験を進め,生体試料の測定可能性を確認し,生体試料測定に向けた知見を得た.さらに,電磁弁をはじめとするマイクロ流体制御機構を実験設備へ導入したのみならず,平成30年度に計画していた,短時間での多サンプル連続測定の予備的な実験も行い,得られた結果を多数の国際会議にて報告している.これらの事実から,「当初の計画以上に進展している」と判断されるため.
|
今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り,提案するバイオ分析プラットフォームの実現に向けて,これまでの研究で得られた知見を総動員し,測定環境を観測・制御して高精度な測定を実現する,高機能化させたデバイスをデザイン・作製する.その上で,微少サンプル量かつ高速であるという提案手法の利点を突き詰め,前例のない極微少量でのリアルタイム拡散係数測定を目指していく.
|