研究実績の概要 |
今年度は正則写像f:X→Yにおける相対的反標準束-K_{X/Y}の研究を行った.以下Yの次元は1以上とする.Kollar-宮岡-森により-K_{X/Y})は豊富にはなり得ないことがわかっていた. その後江尻により-K_{X/Y}は「ネフかつ巨大」にはなり得ないこともわかった.しかし-K_{X/Y}はネフになりえることや巨大にもなりうることがある. しかしそのような場合は特殊であることが示唆されている. 例えばCao-Horingの結果を応用すると, -K_{X/Y}がネフである場合, fは局所自明な射になる. 今回の研究ではこれらの結果を十分に一般的な状況に拡張することを行った. 結果は以下のとおりである. ・-K_{X/Y}のrestricted base locus がfによってY全体に落ちない場合, fは局所自明であり, -K_{X/Y}はネフである. ・-K_{X/Y}のstable base locus fによってY全体に落ちない場合, -K_{X/Y}は半豊富である. ・-K_{X/Y})のargumented base locus がfによってY全体に落ちる. ここでrestricted (stable, augmented) base locusとは, 直線束がネフ(半豊富, 豊富)でない点を集めた集合である. つまり直線束のrestricted base locusが空である場合, その直線束はネフである.また直線束のargumented base locusが全体である場合, その直線束は巨大となる. 以上より今回の研究では-K_{X/Y}がネフや巨大と言った正値性を持つときには, 特殊な状況が起きうることをrestricted (stable, augmented) base locusを用いて記述できることを示した.
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