研究課題/領域番号 |
17J04576
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
窪田 薫 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | ホウ素 / ホウ素同位体 / 鮮新世 / 有孔虫 / 海底堆積物 / 二酸化炭素 |
研究実績の概要 |
当該年度は予察的研究用試料として位置付けていた西赤道太平洋から得られた海底堆積物コア(KR05-15 PC01)中の浮遊性有孔虫2種に関する測定をすべて終え、その結果を学術論文一報としてまとめ、国際学術誌に投稿した(現在査読中)。ホウ素同位体だけでなく、同時にMg/Ca比や酸素同位体比を分析する一連の測定メソッドを確立し、効率よく複数のデータを生産できる体制が整った。また浮遊性有孔虫のホウ素同位体を測定するためには、分析に必要な試料量を3分の1程度に少なくする必要があった。濃度が低いサンプルについても高精度のホウ素同位体ができるように、マルチコレクター型ICPMSのサンプリングコーンおよびスキマーコーンの組み合わせや検出器のアンプの変更を検討した。そうした微量化の技術開発の過程で、有孔虫の洗浄行程(海底堆積物そのものに多くのホウ素が含まれるため)を段階的にストップする実験や、実験環境からのホウ素汚染の影響を定量化する実験を行なった。それらの結果についても国際学術誌に投稿するための準備を進めている。研究課題の主目的である、国際深海科学掘削計画第361次航海で得た海底堆積物コア(IODP Exp. 361 U1476)の分析についてもスタートさせた。堆積物からの浮遊性有孔虫2種の拾い出しについては、G. sacculiferについては既に全て終えており、残るはG. ruberのみ(約3分の1が終了)となっている。拾い出しと同時並行して分析を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験室内で、様々なところからホウ素汚染の影響が確認された。それを特定するのにかなりの時間を要した。汚染の原因として、実験室空気、ガラス製保管容器、MC-ICPMS用オートサンプラー、分子量が大きい有機物を除去するための限外濾過フィルター(長期間保管していたもの)、有機物除去に用いる過酸化水素(長期間保管していたもの)などが特定された。そうした汚染の結果、いくつかの分析については再測定が必要になった。特に拾い出しに時間を要するG. ruberに対する汚染の影響のため、研究課題の進捗に遅れが生じることになった。 海底堆積物コア(IODP Exp. 361 U1476)のコアとコアの継ぎ目に相当する部分のサンプルが大幅に欠落していることが明らかになったため、高知コアセンターにおいて欠落部分の堆積物の再サンプリングを行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、海底堆積物コア(IODP Exp. 361 U1476)の浮遊性有孔虫のホウ素同位体分析を進める。特に実験環境でのホウ素汚染の影響を被らないように、大気からくるホウ素汚染の影響を年を通じてしっかりモニタリングするなど、原因究明に努めるとともに、汚染の影響を軽減できる実験環境を整備する(ケミカルフィルターを備えたクリーンブースの設置など)。 夏にはアルフレッドウェゲナー極地研究所を訪問し、浮遊性有孔虫に対する超微量のホウ素同位体分析法について技術研修を行う。微量分析において必須とな る、よりクリーンな実験環境の整備に関する知識も得て、国内でも同様の分析が可能なようにしたいと考えている。
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