研究課題
今年度は、琉球沖永良部語の言語継承に向けて(1)言語の社会的な状況の把握、(2)言語教材開発、(3)方言教室の運営に取り組んだ。また、(2)(3)に代表される危言語復興研究の理論と実践について学会で発表し、論文化した。こうした研究活動と並行して、地域コミュニティに向けた言語継承に関する情報発信を積極的に行った。(1)について、昨年度調査した、年齢ごとの伝統方言の理解度を測る実験の結果を集計・分析し、学会発表した。また、報告内容を論文化し、同学会が発行する機関誌に投稿、採録が決まった。(2)について、危機言語に適した教材の開発方法について国際学会で発表し、その手順に沿って沖永良部語の教材を開発した。今年度は19課分を作成し、ホームページ「しまむに宝箱」http://erabumuni.comで公開した。(3)について、地域コミュニティと協力しながら、沖永良部島島内2か所で定期的な方言教室を運営した。1つ目は和泊町国頭集落で、子供向けの方言教室を、2018年6月から月に1度開催した。この教室では特別研究員が作成した「子供向け教材」を使用し、特別研究員が渡島できない時には、コミュニティ・メンバーが講師を代行した。2つ目は全島向けに、大人向けの方言教室を、2018年4月から2~3か月に1度開催した。この教室でも特別研究員が作成した「(大人向け)教材」を利用し、特別研究員と方言話者で講師を務めた。(2)(3)に代表される、沖永良部島での言語復興研究の取り組みについて、その理論と実践を国際学会、国内学会で報告した。また、報告内容を論文化し、学会誌に投稿した。
1: 当初の計画以上に進展している
今年度は、言語の社会的状況の把握、教材開発、方言教室の運営に取り組み、また、そこで得られた知見を国際学会3件、国内学会4件、や論文2件として報告した。よって、計画以上に進展していると評価した。
今後は(1)沖永良部語教材の出版、(2)語彙データベースの整備、(3)言語復興先進地域での現地調査を行う。(1)について、現在19課の教材が出来ているため、引き続き制作をすすめ、沖永良部語の基礎知識が包括的に得られる教材として出版する。(2)について、現在1200語あまりが登録されている語彙データベースの音声や例文を拡充し、スマートフォンでも使用が出来るアプリとして公開する。(3)について、ロンドン大学アジアアフリカ院で1ヵ月の研究活動を行い、マン島やウェールズなど近年言語復興が進む地域で、危機言語の研究成果がどのように現地に還元されているかを調査する。こうした研究活動を経て、3年間で制作した教材やデータベース、方言教室の基盤を、地域の言語復興に繋げる方策を考察し、報告としてまとめる。
すべて 2019 2018 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
方言の研究
巻: 6 ページ: 掲載決定
島嶼研究
巻: 20(1) ページ: 71-83
http://erabumuni.com