本年度は、次の二点が主な成果である。 1) TiO2薄膜の高屈折率化モデルの構築 昨年度開発されたAlやMgアクセプターによるTiO2薄膜の高屈折率ルチル相化について、そのメカニズムを電気化学的手法を用いた実験により詳細に考察および調査した。昨年度報告した様に、本材料においては酸素空孔で電荷補償されたAlアクセプターが電子で補償された酸素空孔と会合するとDFT計算から示唆される。実際、ルチル型TiO2薄膜の電気化学的還元電位にAlアクセプターが及ぼす影響を実験的に調査したところ、10 mol%Al添加により還元電位が低下すると判明した。よって、AlアクセプターをTiO2に導入することで欠陥会合が形成され、これがルチル相に類する結晶構造を有するマグネリ相TixO2x-1結晶核となることで、TiO2が高屈折率なルチル相となったと考えられた。 2) GaPxN1-xの作製とその光学特性の評価 GaNとGaPの固溶体GaPxN1-xではxが0.4以上の場合に既存材料より高屈折率な新奇透明材料になる可能性が示された。そこで、この材料を自作したイオンビームアシストPLD装置を用いて作製しその光学特性を調査した。GaNとGaPは熱力学的にはppmオーダーしか固溶せず、作製条件を最適化し光学的に均質な固溶体GaPxN1-x をxが0.2-0.8の広い組成範囲で実現することに成功した。As-depo.状態の試料はTiO2やGaP、GaNよりナローギャップ方向にプロットされる光学特性を示した。これは試料が非晶質であることが一因であると考え、これら試料を窒素雰囲気で熱処理し結晶性の向上を図った。すると試料が一部リン酸塩化したため低屈折率およびワイドギャップ化した。成膜温度や基板、後熱処理条件を工夫し、結晶性が向上されたGaPxN1-xが得られれば高屈折率かつ透明な光学特性が得られると期待される。
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