本年度は、C型ナトリウム利尿ペプチドの受容体NPR-B突然変異マウスShort-limed dwarfism (SLW) のホモ個体(Npr2slw/slw)のうち、授乳期の異常を認めず生存した成体マウスの病態解析をおこない、授乳期マウスとの違いを精査した。成体マウス消化管は、ホールマウント免疫染色により消化管神経系、消化管ペースメーカー細胞 (ICC)、血管およびリンパ管、絨毛内構造の形態について詳細に解析した。 授乳期のNpr2slw/slwでは、消化管粘膜下組織中に網目状に広がるリンパ管に、ノードと乳糜管形成不全が認められた他、絨毛内の血管・神経・平滑筋が全て未発達であった。さらにはICCの発育遅延も認められた。一方で、成体に達したNpr2slw/slwの絨毛とICCはコントロールと区別なく発達していたものの、加齢に従い排便障害により衰弱するケースを複数個体で認めた。それらの個体の消化管は血管分岐が少なく神経系の衰弱箇所が散在していることを発見した。加えて成体のNpr2slw/slwは生殖腺脂肪重量/体重比が有意に小さく、腸管膜脂肪も減少していることを明らかとした。 昨年度までに、Npr2slw/slwの消化管はヒルシュスプルング病の様な神経節欠損ではない事を明らかにしてきたが、本年度は消化管運動不全症発症機序を解明するためにさらなる病態解析を行なった。消化管の発達異常と微小循環異常を突き止めたことは、希少疾患の病態解明に貢献すると思われる。また、成体の解析より、CNP/NPR-Bシグナルが脂肪の合成・蓄積または代謝と深く関わっている事を付加的に明らかにし、高肥満化へのCNPの役割が示唆された事は意義深かった。
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