研究課題/領域番号 |
17J04776
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
金田 礼人 豊橋技術科学大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 超音波モータ / ソフトアクチュエータ / コイルばね |
研究実績の概要 |
大腸癌は癌の死亡率の上位を占めるが、早期発見による治癒率が高い。このため、内視鏡による腸内検査やポリープ切除が大変有効である。しかし、大腸は大きな湾曲部と複雑な形状を有し、内視鏡の挿入が難しく、時には鎮痛剤が必要になるほどの苦痛を伴う問題がある。そこで空気圧や形状記憶合金といったソフトアクチュエータを用いることで、柔らかく自在に曲がる安全な内視鏡ロボットが提案されている。しかし、従来のソフトアクチュエータはストロークが非常に短いため内視鏡の移動範囲が限られてしまう問題があった。申請者はこれまでに、高い剛性を有することで知られる超音波モータに着目し、その出力軸に柔軟なコイルばねを用いることで新たなソフトアクチュエータを提案している。このモータは中央に貫通穴の開いた単一の立方体ステータとその中に挿入されるコイルばねから構成される。中空モータにコイルばねを挿入したことにより、モータはそのコイルの長さに応じた大きなストロークを発揮できる。
本年度の研究では、初めにコイルばねの設計パラメータがモータにどのような影響を与えるか調査し、またスラスト力・速度・分解能・応答性などの基本性能を測定した。モータの柔軟性を評価するためにコイルばねが大きく曲がった状態での速度を計測し、コイルに負荷がかかった状態でもパフォーマンスが落ちないことを実証した。最後に、コイルばねの位置を計測する簡便なセンサの開発を行った。従来使用されてきたエンコーダなどの位置センサはその剛性からソフトアクチュエータの柔軟性を阻害してしまう問題があった。我々は出力軸として用いるコイルばねそのものを位置センサとして扱うことでこの問題を解決した。超音波モータを用いたソフトアクチュエータの開発は世界初の試みであり、従来のアクチュエータの欠点である応答性・精度・ストロークの問題を解決できる興味深い研究である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標は主に超音波モータの小型化である.これまでにモータの基本性能の調査、また予圧や運動における数学的モデルを提案を行っており、モータ設計に必要な基本的な理解を得て小型化への目途がついている。しかし、モータを小型・量産化するためには企業の協力が必要不可欠であり、いましばらく時間がかかる。現在、外部の企業1社と調整を進めている。
モータの小型化に時間がかかるため、この間に柔軟なロボット(索状ロボット)の開発を先に進めている。申請者はフレキシブル超音波モータを模して、新たに電磁モータを用いた簡単な索状ロボットを考案している(詳しくは下記参照)。電磁モータを用いているためロボットのサイズはやや大きいが、開発を目指している内視鏡ロボットと同様の動作を行うことができる。既に簡単な動作実験に成功しており、内視鏡ロボットへの移行もスムーズに行えることが見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
柔軟な索状ロボットの有用性を実証する第一段階として、電磁モータを用いた簡単なロボットの試作を予定している。このロボットはフレキシブル超音波モータを模した作動装置を備えており、ラックアンドピニオンの原理を用いて、コイル状の柔軟な物体を電磁モータで直動させる(特許出願済み)。この作動装置によって、ロボットはミミズのように全長を自在に変化させることを可能にし、狭い場所でも自在に動き回ることが出来る。本研究の遂行にあたり、申請者はイギリスのケンブリッジ大学へ半年間留学し、生体模倣ロボットの権威である飯田史也先生の指導を受ける予定である。ここで開発を予定しているロボットは災害救助を目的としており、既存の内視鏡ロボットと比べると直径が比較的大きい。しかし、その基本的な動作は狭路での移動を目的としており、内視鏡ロボットへの応用が十分に可能であると考えられる。
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