研究課題
本申請課題の最終年度となる平成30年度は、前年度に確立した高効率な遺伝子ノックアウトシステムを用いて、四肢再生に関与する遺伝子の機能解析を実施した。ソニックヘッジホッグ遺伝子(shh)は四肢発生において肢芽後方で発現し、肢の前後軸決定に重要な役割を果たす。四肢再生においても、shhの四肢エンハンサー(MFCS1/ZRS)を介したshhの再活性化が再生の鍵を握っていると考えられている。四肢再生におけるZRSの機能を明らかにするため、前年度に確立した高効率な遺伝子ノックアウトシステムを用いて、ZRSへの変異導入を行ったところ、わずか数塩基の変異により四肢再生が阻害されることを示した。この成果は、有尾両生類において特定のシス制御配列が再生能力に深く関与していることを示した初めての報告である。変異が導入されていた部位は四肢再生に重要と考えられている転写制御因子Xの結合配列であった。さらにZRS変異体では再生芽をまったく形成しないというシビアな表現型も見られており、前後軸決定だけではなく四肢再生そのものにも重要である可能性が示唆された。ZRSの機能解析では当初の予想を超えた興味深い結果が得られたため、オミックス解析により明らかとなった四肢再生芽で発現する分子の機能解析には至らなかったが、有尾両生類の再生メカニズムに迫りうる重要な知見を得ることができた。また、イベリアトゲイモリにおけるsafe harbor siteの同定にも成功した。この領域に、当研究室で開発したノックイン技術PITCh法を用いて、ヒストンH3のアセチル化修飾動態を解析できるプローブ(Mintbody)配列を挿入したイモリの作出を試みた。トランスジェニックイモリはMintbodyの特徴である核特異的な蛍光を全身で長期間(3ヵ月以上)安定して示し、ゲノム編集技術を用いた個体レベルの遺伝子機能解析システム構築の見込みが立った。今後はF1の作出をすすめ、生殖細胞系列への伝達を確認する予定である。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
DNA Research
巻: - ページ: -
10.1093/dnares/dsz003
Methods in molecular biology
巻: 1865 ページ: 91-103
10.1007/978-1-4939-8784-9_7
Developmental Biology
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10.1016/j.ydbio.2018.09.008