現代の実験や精密観測の発展により、超弦理論や量子重力理論の検証が可能になりつつある。その低エネルギー有効理論が、宇宙論的な観測にどのような予言を与えるのか議論することは非常に重要である。本研究では、重力理論の統一的な枠組みであるスカラーテンソル理論を用いてその理論予言を行い、将来観測での理論の特定を目指す。3年目では、DHOST理論における密度揺らぎの高次補正を取り入れた2点相関関数の解析と非ガウス性を通じたバウンスシナリオの検証可能性を議論した。 DHOST理論は,運動方程式が2階の最も一般的なホルンデスキー理論を拡張した高階微分理論である。この高階微分は、低エネルギー有効理論として頻繁に現れ、宇宙論的に興味深い予言を与えることが期待される。2年目では、線形密度揺らぎについては解析を行った。3年目ではさらに高次の揺らぎの効果を考慮した2点相関関数の解析を行った。2次、3次オーダーの解では、密度揺らぎの新たな波数依存性がΛ-CDMモデルやホルンデスキー理論との違いとして生じた。これが2点相関関数に対して大きな影響を与え、紫外発散を生じた。これは一般相対論やホルンデスキー理論のような重力理論では現れない性質であり、全く新しい発見となった。 インフレーションを実証するためには、標準的なインフレーション以外の可能性も検討し、両者の観測に対する予言を比較する必要がある。例えば、バウンスシナリオは、インフレーションが抱える初期特異点の問題を回避する代表的な対抗馬である。しかし、そもそも観測と整合的なバウンスモデルを一般相対論の枠組で構築することは不可能である、という問題があった。研究代表者は、ホルンデスキー理論まで重力理論を拡張することで、観測と整合的なバウンスモデルを構築可能であることを示し、重力波の3点相関関数にインフレーションとの明確な違いが現れることを指摘した。
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