研究課題
遺伝子の水平転移は、生物の進化や多様化に大きく貢献してきたと考えられている一方で、その分子メカニズムについては未解明な部分が多い。本研究では、遺伝子の水平転移現象の実験的再現により「転移遺伝子が、転移先の核ゲノムで発現能を獲得する分子プロセス」の解明を試みた。最終度はまず、植物の核ゲノムに導入した外来のコード配列の転写開始点(TSS)の細分類化を行い、外来コード配列挿入に伴う新生TSS(= de novo TSS)と、既存のプロモーター領域を利用したTSSとを明確に区別した。de novo TSSは、受容ゲノム中に既存のプロモーター様配列やエピゲノム状態とは関係なく、挿入配列の上流100bpの領域で集中して活性化されていた。また興味深いことに、翻訳開始シグナルとして知られるKozak配列を有するORFを特異的に避けて分布していた。しかし、本実験では、挿入配列の発現や機能に基づく細胞選抜は行っておらず、たかだか10-20回程度の体細胞分裂しか経ていない。このことは、de novo TSSとは、ランダムに生じたバックグラウンドノイズではなく、ゲノムのもつ機能として、獲得したコード配列に対して自律的かつ迅速な転写活性化・選抜を経た結果であることを示唆している。以上を踏まえ、ゲノム中で生まれたばかりの遺伝子配列に転写能を賦与する過程を組み込んだ、新しい遺伝子進化のモデルを構築した。また、外来遺伝子配列周辺のエピゲノム状態を解析するために開発を試みた1分子エピゲノム解析法については、予備実験までしか進むことができなかった。しかし、その過程で、当初計画案よりも発展・応用性の高い新規アイデアの着想に至り、かつ、本手法を確立する上での技術的問題点も明らかとなっている。現在、それらを克服すべく系の改良を進めている。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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