研究課題
基底状態にある有機分子が一電子励起された場合、励起一重項状態及び励起三重項状態と呼ばれる電子スピン状態の異なる二つの励起状態を取りうる。内部緩和を経て最低一重項励起状態に緩和した電子は、基底状態へ放射または非放射失活する過程や、エネルギー的に低い最低三重項励起状態へと遷移する過程が考えられる。一重項励起状態と三重項励起状態間の電子遷移過程(項間交差過程)はスピン変換が必要な遷移であり、一重項励起状態から三重項励起状態への項間交差過程は広く観測され、三重項励起子を利用する有機デバイスで重要な役割を担っている。しかし、スピン変換過程の始状態及び終状態は自明であるものの、依然として項間交差過程の励起状態ダイナミクスは謎に包まれている。本研究では、項間交差過程だけでなく、三重項励起状態から一重項励起状態への逆項間交差過程を示す熱活性型遅延蛍光(TADF)分子のスピン変換過程の詳細な光学特性評価、量子化学計算による理論的な手法を用いることによって、スピン変換を仲介する高次三重項励起状態が中間遷移状態として存在することを明らかにした。また、高次三重項励起状態の電子状態は、部分構造分子の三重項励起状態の電子構造に由来することを実験的・理論的な両側面から明らかにした。この研究成果は、電荷移動状態を示すTADF分子の設計指針として、部分構造由来の高次励起状態を考慮した設計が必要であることを明確に提示するものである。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) 産業財産権 (1件)
Chemistry Letters
巻: 48 ページ: 126-129
10.1246/cl.180813
Advanced Electronic Materials
巻: in press ページ: in press
10.1002/aelm.201800708