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2018 年度 実績報告書

血管形成促進概念に基づく膵がんの制御

研究課題

研究課題/領域番号 17J04925
研究機関大阪大学

研究代表者

塚田 陽平  大阪大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2017-04-26 – 2020-03-31
キーワードがん微小環境 / 腫瘍血管 / PDX / 生体イメージング
研究実績の概要

当研究室では、腫瘍血管正常化による抗がん剤の送達向上や抗腫瘍効果の向上など、がん治療における腫瘍血管制御の重要性を報告してきた(Takara K., Cell Reports 2017, Eino D., Cancer Research 2018)。基礎研究により得られた知見をがん治療に応用するために、基礎と臨床をつなぐヒト腫瘍血管の動物モデルが求められている。そこで、本研究では、ヒト腫瘍血管を標的とした薬剤によるヒト腫瘍血管の形態変化を調べることを主目的とし、ヒト腫瘍血管in vivoモデルの開発に着手した。患者由来の腫瘍環境を再現する必要があると考え、patient-derived xenograft(PDX)モデルとdorsal skinfold chamber(DSC)を使用した。ヒト腫瘍血管を観察する本モデルをDSC-PDXモデルと名付けた。そして、血管の伸長が腫瘍血管の特徴と考え、がん環境を再構築できているかを評価する方法として、ヒト腫瘍血管の伸長に着目した。本年度得られた成果は以下の通りである。
1.大腸がん患者由来腫瘍血管を観察することが可能であったが、腫瘍血管の伸長が観察されなかった。
2.膵がん患者由来腫瘍血管を観察することが可能であった。膵がん患者由来腫瘍移植時に、ヒト間葉系幹細胞(hMSC)を追加することで、ヒト腫瘍血管の伸長が見られた。
3.ヒトとマウスの血管は、血管内皮細胞のVE-cadherinを介して結合している可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成30年度は、ヒト細胞株由来の腫瘍を免疫不全マウスに移植する系にて、レシピエント腫瘍の全血管中の50%以上がドナー由来の腫瘍血管になるような移植条件の探索を目的としていた。前年度より、観察窓を用いて同一マウスを複数日数にわたって観察する蛍光生体イメージングの実験系を用いている。
現在までに、以下のことを明らかとした。(1)ヒトがん細胞やヒト腫瘍血管の生着率を向上させるために、NOD-Scidマウスより免疫不全レベルの高いNSGマウスを使用したが、目的とする結果は得られなかった。(2)大腸がん患者由来腫瘍血管を観察することが可能であったが、腫瘍血管の伸長が観察されなかった。腫瘍組織の免疫染色により、大腸がん患者腫瘍においては腺管構造が見られたが、DSC-PDX腫瘍ではその腺管構造が確認されなかった。がん細胞の生着性が低いことがヒト腫瘍血管の伸長が観察されなかった原因の一つと考えられる。(3)膵がん患者由来腫瘍血管を観察することが可能であった。膵がん患者由来腫瘍移植時にヒト間葉系幹細胞(hMSC)を追加することで、ヒト腫瘍血管の伸長が見られた。一方、大腸がん移植時にhMSCを追加しても、ヒト腫瘍血管の伸長が観察されなかった。このことから、大腸がんの腫瘍血管と膵がんの腫瘍血管では、腫瘍血管の伸長に関わる細胞が異なることが示唆された。
以上の結果を総合的に判断して、当初の研究目的の達成度としておおむね順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

大腸がん患者腫瘍を用いた検討では、ヒト腫瘍血管の伸長は確認されなかった。その原因として、がん細胞の生着性が低く、ヒト腫瘍血管が伸長するヒトがん微小環境が整っていないことが考えられた。そこで現在、ヒトがん微小環境を模倣する検討を進めている。
ヒト腫瘍血管の伸長が観察される条件の決定後、既存の血管新生阻害剤を用いて、血管新生阻害効果を評価するモデルとしての妥当性を検討する。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Galectin-3 Inhibits Cancer Metastasis by Negatively Regulating Integrin β3 Expression2019

    • 著者名/発表者名
      Hayashi Yumiko、Jia Weizhen、Kidoya Hiroyasu、Muramatsu Fumitaka、Tsukada Yohei、Takakura Nobuyuki
    • 雑誌名

      The American Journal of Pathology

      巻: Volume 189, Issue 4 ページ: 900-910

    • DOI

      10.1016/j.ajpath.2018.12.005

    • 査読あり
  • [雑誌論文] LPA4-Mediated Vascular Network Formation Increases the Efficacy of Anti?PD-1 Therapy against Brain Tumors2018

    • 著者名/発表者名
      Eino Daisuke、Tsukada Yohei、Naito Hisamichi、Kanemura Yonehiro、Iba Tomohiro、Wakabayashi Taku、Muramatsu Fumitaka、Kidoya Hiroyasu、Arita Hideyuki、Kagawa Naoki、Fujimoto Yasunori、Takara Kazuhiro、Kishima Haruhiko、Takakura Nobuyuki
    • 雑誌名

      Cancer Research

      巻: 78 ページ: 6607-6620

    • DOI

      10.1158/0008-5472.CAN-18-0498

    • 査読あり
  • [学会発表] Establishment of an in vivo model to observe patient-derived tumor blood vessels2018

    • 著者名/発表者名
      Tsukada Y., Muramatsu F., Naito H., Kidoya H., Takakura N.
    • 学会等名
      International Vascular Biology Meeting 2018
    • 国際学会
  • [学会発表] 患者由来腫瘍を用いたヒト腫瘍血管in vivoモデルの開発2018

    • 著者名/発表者名
      塚田陽平、村松史隆、木戸屋浩康、高倉伸幸
    • 学会等名
      先端モデル動物支援プラットフォーム若手支援技術講習会
  • [学会発表] An in vivo model of human tumor blood vessels using patient-derived tumor: the development2018

    • 著者名/発表者名
      Tsukada Y., Muramatsu F., Kidoya H., Takakura N.
    • 学会等名
      The 16th Korea-Japan Joint Symposium on Vascular Biology
    • 国際学会
  • [学会発表] 蛍光生体イメージングを用いたがん患者由来腫瘍血管in vivoモデルの確立2018

    • 著者名/発表者名
      塚田陽平、村松史隆、木戸屋浩康、高倉伸幸
    • 学会等名
      第77 回日本癌学会学術総会
  • [学会発表] がん患者由来腫瘍を用いたin vivoヒト腫瘍血管モデルの開発2018

    • 著者名/発表者名
      塚田陽平、村松史隆、木戸屋浩康、高倉伸幸
    • 学会等名
      第26 回血管生物医学会学術集会
  • [学会発表] 化学療法耐性神経膠芽腫の生体イメージング解析2018

    • 著者名/発表者名
      村松史隆、木戸屋浩康、塚田陽平、林弓美子、高倉伸幸
    • 学会等名
      第26 回血管生物医学会学術集会
  • [備考] 研究室ホームページ

    • URL

      http://st.biken.osaka-u.ac.jp/

URL: 

公開日: 2019-12-27  

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