2019年度はパラサイト隕石のタングステン同位体及び白金同位体比の測定、パラサイト隕石の鉱物学的な観察、パラサイト隕石母天体の熱史の研究を行った。2018年度までに得られたハフニウム-タングステン同位体年代の結果をまとめ、他の年代計との結果と比較することで、パラサイト隕石が~1000 Kの温度領域において12 - 18 K/Myrという冷却率を持つことが示された。 これまでに得られえた隕石のハフニウム-タングステン同位体年代の地質学的重要性を理解するため、隕石の鉱物学・地球化学的研究を中心に進めた。特にカンラン石とクロマイトの間の元素拡散プロファイルに着目し、隕石試料の冷却率が~1000 Kの温度領域において~10 K/Myrであったことが得られた。これは年代学的な冷却率と非常に調和的な結果となる。 これらの結果を合わせ、隕石母天体の熱史のモデリング計算を行った。年代学的な研究結果より、パラサイト隕石の母天体においては60Feが熱源となりえることが判明したため、本研究では短寿命放射性核種を熱源に持つ天体の熱史を計算した。この結果、パラサイト隕石の母天体は直径100 km以下であったことが示された。 本研究の一連の結果は、内側太陽系において~100 kmのサイズを有する微惑星が太陽系100万年以内に集積・分化をしていたことを示すものである。太陽系形成後500万年で60Feの熱源としての効果がなくなることが示唆されたため、母天体の集積時期が天体の分化度合いに大きな影響を与えていることが示唆された。
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