研究課題/領域番号 |
17J05061
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
小室 允人 千葉大学, 大学院人文社会科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | 会話分析 / エスノメソドロジー / HRI |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,ロボット,AIとヒトとのインタラクションを調査することで,ヒトがロボットやAIをどのような相互行為の対象として理解しているのかを探るものである.初年度には,WoZ法を用いたモニター上のアバターと被験者とのやり取りを動画撮影し,会話分析の手法を用いて分析を施した. 今年度の主な実績としては,人工知能学会第82回SLUD(言語・音声理解と対話処理)研究会での発表があげられる.本発表で用いた対話データは,対話エージェント(モニター上に人型のキャラクタと対話するシステム)と人の被験者との一対一の対話を録画した動画データである.本データは,2016年4月から開始された人工知能学会 言語・音声理解と対話処理研究会のワーキンググループ「人システム間マルチモーダル対話共有コーパス構築グループ」の活動の一環として収集された.対話エージェントはMMDAgent を用いWoZ(Wizard of Oz)法により制御されている. 本発表では特に,対話エージェントと被験者の発話の重なりに注目し,これらの発話の重なりをどのように被験者が解消しようとしているのかを詳細に分析した.結論としては,システムとの対話において人間は音声入力のタイミングを測っているということを事例に基いて実証的に示し,対話システムとの自然なやり取りにおいて重要なのは,意味論的に適切な文を産出するということだけではなく,その文が実際の会話の展開において,どのように組み立てられるのかということを論証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は,当初の予定であった書き起こしのアルバイトを雇うことが実現できなかった.これは申請者の専門としている会話分析特有の書き起こし作業を行うことのできる作業者の確保が困難だったためである.しかし,書き起こし自体は,私自身が進めていたこともあり,前述の実績報告に記した研究会発表にあたっては,大きな問題は生じなかった.二年度は引き続き自身で書き起こし作業を継続しつつ,また荒起し(会話分析に使用するようなレベルではないもの)として,作業を業者に外注する予定である. 研究会での発表は,多くのロボット開発系の工学者に関心を持っていただけた.特に,ある研究者からは共同研究を打診していただき,4月5月中に,全自動のロボットと被験者のインタラクションを動画撮影する予定である.この共同研究は,特別研究員申請当初には予期していなかったことではあるが,私がまだ保有していない全自動ロボットを用いるデータを得る,貴重な機会である. 以上のように,本研究が大きく進展したことを鑑みると,書き起こしが遅れているとはいえ,本研究課題の進捗は全体としておおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
二年目にあたる今年度は,動画データの書き起こしを専門の業者に外注し,それにより出来上がった荒起しを元に,重要だと思われる部分を申請者本人が改めて詳細に書き起こし,分析する.また初年度と同様,申請者が月に一回の頻度で参加している会話分析の研究会にデータを持ち込んで発表することで,他の研究者らからのコメントを貰う.これにより得られた結果は,随時学会で発表し,論文化していくこととする. また,初年度での研究会発表の際の資料を論文化し,適当と思われる学会に投稿を予定している.その際には,日本の学会への投稿と同時に,論文を英語化して海外の学会への投稿も検討している. 現在考えられる投稿先は,日本社会学会,Research on Language and Social Interactionなどであるが,この他にも工学,情報学系の学会も前向きに検討したい.特に人工知能学会は有力な候補である.
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