本研究の目的は,ロボット,AIとヒトとのインタラクションを調査することで,ヒトがロボットやAIをどのような相互行為の相手として理解しているのかを探るものである.本年度は,初年度の研究の分析,理論を発展させたものを,5th International Conference of Conversation Analysis ICCA-18にて発表した.発表後には,多くの国外研究者からの有益なコメントを得ることができた. また,この初年度の研究成果がきっかけとなり,本年度から新たに,工学者との共同研究をスタートさせた.本研究では,WoZ(Wizard of Oz)法により制御されているロボットと実験参加者の相互行為場面において,ロボットのオペレータが,実験参加者との相互行為をスムーズに進行させるために,限られた相互行為資源をどのように用いているのかの検討をおこなった.こちらの研究成果に関しては,2019人工知能学会 言語・音声理解と対話処理研究会(SLUD)第85回研究会にて発表した. 更に,これまでの人間が操作するWoZ法データとは別に,全自動のロボットと実験参加者との相互行為の分析・検討が,現在まで継続中である.本研究は,これまでの研究で得られた知見からの発展研究であるが,その成果については,まだ学外での発表,投稿などには至ってはいない.しかし都内で開催されている研究会から出版される本の一章として,執筆の依頼を受けており,現在執筆中である.具体的な本研究の内容であるが,実験参加者がロボットへ音声を入力する際に,先と同じ発話の繰り返す,もしくは全く別の発話を産出する,という事例が観察された.これらの事例から,人間がロボットへ音声を入力しようとするときに実践として従っている規則を明らかにしようとするものである.
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