研究課題/領域番号 |
17J05098
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
清田 泰裕 東京工業大学, 物質理工学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 熱電材料 / 有機半導体 / 電界効果トランジスタ |
研究実績の概要 |
本研究は、電界効果トランジスタ構造を用いて有機物における熱電特性とキャリア数の間の関係性を調べることによって、高性能な有機熱電材料の開発及び設計指針を明らかにすることを目的としている。 初めに、高性能な有機トランジスタ材料であるルブレン単結晶に対して測定を行うこととした。昨年度は絶縁層にSiO2、イオン液体それぞれを用いたルブレン単結晶トランジスタを動作させることに成功したが、これらの単結晶トランジスタで熱起電力測定を試みたところ、ゲート電極の熱伝導度が良すぎるために温度差を発生させることができなかった。 そこで、本年度は基板とゲート電極に熱伝導率の小さなITOガラス基板を用い、絶縁層としてパリレンCを蒸着したトランジスタを作製した。この基板を用いてルブレンの単結晶トランジスタを作製したところ、3 cm2/Vs 程度の高いトランジスタ移動度が得られた。 このトランジスタ構造を用いて熱起電力測定を行うために、レーザー加熱によってソースドレイン電極間に温度差を発生させる方法を考案した。真空プローバーの窓越しにレーザーを照射したところ、約10 K程度の温度差が得られた。室温における電気伝導度と熱起電力のキャリア数依存性を測定したところ、電気伝導率はキャリア数に比例して大きくなり、熱起電力はキャリア数に比例して小さくなってゆく振る舞いがみられた。一方で電気伝導度と熱起電力の二乗の積で求められるパワーファクターはキャリア数増加につれて単調に増加しており、誘起されているキャリア数が十分でないことが窺われる。 低温において同様の測定を行ったところ、熱起電力は低温につれて大きな負の値をを示した。これはトランジスタ移動度の温度依存性がホッピング伝導的な振る舞いを示していることから、トラップの影響によるものではないかと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度において、電界効果トランジスタ構造を用いたルブレン単結晶の熱電特性の測定に成功した。有機半導体単結晶に対するこのような特性の報告は非常に限られており、熱電材料開発における新たな知見を与える測定法の開発に成功したと言える。
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今後の研究の推進方策 |
ルブレン単結晶における電界効果トランジスタ構造を用いた熱電特性の報告は既に存在するが、今回得られたデータはそれと大きく異なっている。これはトランジスタの動作原理の違いによるものだと考えているため、バンド伝導的な振る舞いを示すトランジスタを作製し、測定を行おうと考えている。具体的には絶縁層にパリレンCではなくSiO2を蒸着し、トランジスタを作製する予定である。また、さらに多くのキャリアを誘起した状態で測定を行うために、イオン液体をゲート絶縁層に用いたトランジスタを作製し、同様の測定を行おうと考えている。加えて分子構造、結晶構造の異なる材料に関する知見を得るために、他の有機半導体材料に対しても同様の測定を行おうと考えている。
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