竹林における植物ケイ酸体の粘土鉱物化プロセス及び土壌改良材としての有効性を解明し、人為的な土地の攪乱等によって劣化した土地の土壌改良材として、ケイ酸集積特性をもつタケの利用を提案することを目的とし、以下の成果を得た。尚、本課題は、就職に伴うJSPS特別研究員の中途辞退により、3年から1年限りの実施へ変更となったため、焦点を絞り研究を行った。 タケ葉の分解速度と分解に伴う植物ケイ酸体の放出量を明らかにするため、モウソウチク林からタケの各器官(葉リター、根、稈)を採取し、分解試験を開始した。約2年間計5回の回収を見込み計80個のリターバッグを作成し、同竹林林床のリター層の上に設置し、細根試料の一部を土壌表層に埋設した。また、新鮮な葉リターの表面に付着する土壌由来のケイ素(Si)の混入の影響を明らかにするため、リターを1~10分間振とうあるいは超音波洗浄し、洗浄操作の違いによるリターからの元素溶出量を調査した。その結果、10分間の振とうによる水洗浄で溶出した溶存態Si濃度は経時的に増加傾向であり、超音波洗浄でより高い傾向であった。しかしながら、両者いずれの洗浄操作においても、洗浄前の葉の絶乾重量に対するSi溶出量の割合は1%未満であり、99%以上が洗浄後の葉に含有していた。一方、カリウム、リンは、1分間洗浄で10%程度、10分間洗浄で20%程度が溶存態として検出された。また、アルミニウムおよび鉄は超音波洗浄10分後で30~35%が、表面沈着物に由来すると考えられる懸濁態として検出された。以上より、新鮮な葉リターの表面に付着するSiは葉中のSi含有量に比べて小さく、洗浄操作の違いがリターからのSi溶脱に与える影響は小さいことが明らかとなった。一方で、対象とする元素に応じて洗浄強度を考慮する必要性があることが示唆され、分解実験の処理過程で留意すべき重要な基礎的知見を得ることができた。
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