研究課題
単結晶金属酸化物ナノワイヤは多彩な機能を有し、大気・水中における高い化学的安定性から、基礎科学のみならず応用展開が注目されている材料群である。電子デバイス素子として応用展開するためには、その材料が有する電気伝導特性を制御することが不可欠である。しかし酸化物ナノワイヤは、結晶成長中における意図しない不純物導入により電気伝導特性制御に問題を有していた。そこで本研究は、酸化物ナノワイヤ結晶成長中における結晶成長界面に着目することで、ナノワイヤ電気伝導特性を制御することを目的とした。ナノワイヤ結晶成長中における供給金属材料条件を精密に制御することで、気固界面結晶を選択的に成長させたコアシェル状ナノワイヤの電気伝導性を評価したところ、高い電気伝導性を有することが判明した。一方、気固界面成長を有しないナノワイヤは絶縁性を有することを観測した。単一ナノワイヤ素子を用いた電気伝導測定の結果から、シェル層成長量の差異による電気伝導率増加を観測した。ナノワイヤ断面を用いた化学組成評価の結果、コアシェル状ナノワイヤにおいて結晶内化学組成の化学量論比からの大きなずれを観測することに成功した。この結果から、不十分な酸素供給量が電気伝導性を生み出す可能性が考えられたため、結晶成長中における供給酸素分圧を制御したナノワイヤを作製し、電気伝導特性を評価した。その結果、依然としてシェル構造を有するナノワイヤにおいて高い電気伝導性が観測された。異なる結晶成長界面がもたらす結晶性差異を観測するため分子動力学計算による界面別結晶成長メカニズムを検討した結果、液固界面では界面アニーリング効果により欠損が抑制されることが判明した。一方、気固界面結晶はアニーリング効果の影響が弱く、結晶欠陥を導入しやすいことが判明した。
2: おおむね順調に進展している
平成29年度は、単結晶酸化物ナノワイヤ結晶成長中における結晶成長界面に基づく電気伝導特性制御を目的とした。供給金属材料の制御により結晶成長界面を選択成長させたコアシェル状ナノワイヤは、コア層のみ有するナノワイヤと比較し、数桁に及ぶ高い電気抵抗値を有することを観測した。これは酸化物ナノワイヤ電子輸送特性制御に繋がる知見である。さらに供給酸素分圧制御により成長したコアシェル状ナノワイヤも、依然として高い電気伝導性を有することを観測した。これは気固界面成長における結晶成長が、本質的に電気伝導性を有しやすいことを示す重要な知見である。以上のことからおおむね順調に進展していると判断した。
今後は、結晶成長界面を選択的に成長させたナノワイヤを用いたナノデバイス応用展開を目的に研究を推進する予定である。デバイス応用展開を推進するにあたり、ナノワイヤ表面・内部‐外場との相互作用を理解する必要がある。よって種々の外部刺激との相互作用を検証することを第一の目標とする。
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Nano Letters
巻: 17 ページ: 4698-4705
10.1021/acs.nanolett.7b01362