研究課題/領域番号 |
17J05148
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
梶田 宗吾 大阪大学, 情報科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
|
キーワード | 実環境シナリオ / サイトサーベイ / チャネル選択の有効性評価 / スループットゲイン |
研究実績の概要 |
DC2採用前の博士後期課程1年までに実施した研究では、都市部における無秩序的な周波数チャネルの利用によって引き起こされる電波干渉とそれに伴うWi-Fi通信品質の低下を避けるため、Wi-Fiアクセスポイントにおける自律チャネル制御手法の提案を目標とした、簡易なモニタリングによるチャネル状況把握と機械学習を組み合わせたチャネル品質予測手法を提案し、国内論文誌や国際会議にて発表を行った。最終年度(平成30年度)の目標である、提案手法を実装した自律干渉制御アクセスポイントの実装と実環境における有用性評価実験へ向けて、今年度(平成29年度)は、より詳細な性能評価を行うことによって提案手法の実環境における実現可能性を検討した。 対象環境である都市部におけるWi-Fi利用状況のモデル化にあたり、具体的なシチュエーション/ユースケースとして、大阪市御堂筋で毎年行われており来場者の多い御堂筋パレードを対象とし、御堂筋にてサイトサーベイを実施した。この観測結果を活用し、既存の公衆Wi-Fiアクセスポイントの位置情報とその稼働チャネル、トラフィック流量をパラメータとして抽出し、シミュレーションへの入力とすることで、実環境シナリオを構築した。 このシナリオを用いて、(1)チャネル品質予測手法の予測性能の評価実験、(2)提案手法に基づくチャネル制御の有効性評価実験を実施した。評価実験(1)の結果、構築したシナリオにおいて、提案手法は最良の通信品質に到達可能なチャネルを選択できることを確認した。加えて、評価実験(2)の結果から、最良のチャネルを選択することができれば、最大で1.73倍の効用が得られることも確認できた。これらの結果を受けて、実環境を模したシナリオにおける提案手法の動作を確認し、来年度におけるプロトタイプ作成の実現可能性を確認できたと結論づけている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年次計画として掲げた、(1)基礎アルゴリズムの高度化および(2)大阪市を対象とした広域シミュレーションによる性能評価について、おおむね順調に進展している。(1)については、大阪市におけるサイトサーベイの結果を解析することにより、トラフィック流量などについて得られた知見を、提案アルゴリズム構築に活かすことで実施できたと考える。また、(2)については、大阪市御堂筋におけるシナリオ構築を実施し、性能評価実験を行っている。これは、(2)の実施目的に直接的に寄与するものであると考える。加えて、毎年御堂筋で行われる御堂筋パレードを模したシナリオ作成も進めており、これは来年度の計画における実アプリケーションを想定した実用性評価に関連するものである。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、提案手法を機能として組み込んだ自律干渉制御アクセスポイントのプロトタイプ実装および実サービス/アプリケーションを想定した当アクセスポイントの実用性評価実験を実施したいと考えている。今年度の成果として、実環境を模したシナリオにおける提案手法の動作を確認しており、かつ、実サービス環境の想定として御堂筋パレードシナリオの構築も進めていることから、十分に実現可能であるとしている。一方で、プロトタイプ実装にあたり、周辺干渉状況を取得するためのチャネルセンシング部分(特にセンシングオーバーヘッド)については、これまでに検討できていない。これについては、既存研究で実施されている、複数インターフェイスを活用した制御を考慮に入れ検討を進める予定である。
|