研究課題/領域番号 |
17J05190
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
広瀬 悠平 東京理科大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | ダイヤモンド装飾正方格子 / 量子ダイマー模型 / コラムナー状態 / リープ格子 / 長距離秩序パラメーター / スケーリング則 / 量子モンテカルロ法 / 修正スピン波理論 |
研究実績の概要 |
本研究では、ダイヤモンド装飾正方格子ハイゼンベルグ反強磁性体を扱っている。ダイヤモンド装飾正方格子を構成するダイヤモンドユニットの4辺の相互作用を1、対角線上の相互作用をλとした場合、0.974<λ<2では非自明な巨視的縮退を持つ非磁性基底状態(以下、「巨視的縮退状態」と呼ぶ)が現れる。この巨視的縮退状態は、正方格子量子ダイマー模型(QDM)のヒルベルト空間と等価になる。この巨視的縮退状態に、隣接したダイヤモンドユニット間、及び、向かい合ったダイヤモンドユニット間を結ぶ次近接相互作用の2種類の次近接相互作用を摂動として導入することで,巨視的縮退状態に対する2次の有効ハミルトニアンとして、正方格子QDMを導いた(次近接相互作用を導入する際、ダイヤモンドユニットが正方格子面に対して立った系を考えた)。得られたQDMは、ダイマーのペアホッピングを持ち、ダイマー間引力相互作用が発現することが分かった。この結果から、プラケットの対辺に2つのダイマーが配置された、コラムナー状態が安定化されると結論付けた。 また、λ<0.974の場合はフェリ磁性状態が基底状態になり、系はスピン1とスピン1/2のリープ格子上のフェリ磁性状態と等価になる。そこで、量子モンテカルロ法を用いて、スピン1サイトとスピン1/2サイトの長距離秩序パラメーターをそれぞれ計算した。2017年度以前、修正スピン波理論を用いて同様の計算を行い、基底状態でのスピンの縮みの比と各部分格子のサイト数の比が反比例するというスケーリング則が成立することを発見したが、量子モンテカルロ法を用いた場合もこの成立を確かめることができた。スケーリング則を長距離秩序パラメーターに対して証明することは難しいが、修正スピン波理論での数理構造を再検証し、基底状態での全スピンの大きさに着目することで、スケーリング則成立の起源に関する考察を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2017年度以前は、ダイヤモンド装飾正方格子ハイゼンベルグ反強磁性体の巨視的縮退状態に、隣接したダイヤモンドユニット間を結ぶ次近接相互作用のみを摂動として導入していたが、この場合は、ダイマーのペアホッピングのみを持ち、ダイマー間相互作用が働かない正方格子QDMが得られていた。そこで2017年度は、向かい合ったダイヤモンドユニット間を結ぶ次近接相互作用をさらに導入することでダイマー間相互作用が発現することが分かり、それは引力となった。 スピン1とスピン1/2のリープ格子上のフェリ磁性状態のスピンの縮みのスケーリング則は、修正スピン波理論を用いた場合に成立することは2017年度以前に確認していた。2017年度は、量子モンテカルロ法でもスケーリング則が成立することを確かめた。さらに、修正スピン波理論と量子モンテカルロ法を用いて、リープ格子シングレット状態の場合もスケーリング則が成立することが分かった。また、スケーリング則成立の背景にある、修正スピン波理論における数理構造についても検証することができた。 以上の理由で、当初の計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
ダイヤモンド装飾正方格子ハイゼンベルグ反強磁性体の巨視的縮退状態において、ダイヤモンドユニットが正方格子面内に寝かせた系に次近接相互作用を導入し、正方格子QDMを導出する。さらに、どのパラメーターの領域でRVB状態が実現できるのか、検討する。さらに、ダイヤモンド装飾三角格子の場合の計算も実行する。
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