研究実績の概要 |
前年度に引き続き,スピン1/2ダイヤモンド装飾正方格子ハイゼンベルグ反強磁性体の巨視的縮退した非磁性基底状態(0.974<λ<2, λ:ダイヤモンドユニット(以下,ユニットと呼ぶ)の4辺の相互作用の大きさに対する対角線部分の相互作用の比)に,摂動として次近接相互作用を導入することによって,2次有効ハミルトニアンとしての正方格子量子ダイマー模型を導いた。前年度は,ユニットが正方格子面に対して立った系を考え,向かい合うユニット間に次近接相互作用を導入した。導いた正方格子量子ダイマー模型は,巨視的縮退する全てのλの領域 (0.974<λ<2)でダイマー間引力相互作用を持つものであった。一方,今年度は,ユニットが正方格子面に対して寝かせた系を考え,向かい合うユニット間に次近接相互作用を導入したところ,λの中間領域でダイマー間斥力相互作用が生じることが分かり,その発現機構について考察した。さらに,Rohksar-Kivelson point (RVB状態)が発現するパラメーターも見出すことができた。 その他,最隣接格子間のクーロン相互作用を含む正方格子拡張ハバード模型を用いた研究にも取り組んだ。2001年,Chakravartyらは,銅酸化物高温超伝導体の擬ギャップ相に対応して隠れた秩序(d波型電荷秩序)が存在すれば,種々の実験データが説明可能であることを指摘している。そこで我々は,拡張ハバード模型に基づく微視的なアプローチにより,d波型電荷秩序とd波型超伝導秩序を共に考慮した平均場計算を実行し,彼らが提案した現象論が具体的な模型で実現しうることを示した。
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