本研究では認知機能の遂行機能に着目しており、「遂行機能が痛みの憎悪に影響を与えるのか」を検討し、因果関係を明らかにすることを目的としている。計画において実施することは大きく2つある。①毎年行っている地域在住高齢者を対象としたデータ測定を実施し、縦断研究のフォローアップ調査(ベースライン調査に関しては昨年度に行っている)を行い、遂行機能が痛みに影響を与えるのかを観察研究いて縦断的に検証すること、②介入研究を行うことである。 ①に関してはデータ測定を予定通り行い検証を行った。縦断的観察研究を行い遂行機能が痛みに与える影響を検討した結果、遂行機能が痛みに影響を与えるのではなく、痛みが遂行機能に影響を与える可能性が示唆された。得られた観察研究の成果を英語論文としてまとめ、国際誌Gerontology and Geriatric Medicineに受理され出版し、2018年予防理学療法学会にて発表を行った。 ②の以前にプレ実験を行う予定であったが、観察研究の結果が仮説通りの結論は得られなかったため、実施を延期し計画を再検討した。しかし、ランダム化比較試験は観察研究より質を高く因果関係について検証できるため、予定通りランダム化比較試験の本実験を行った。対象者は認知機能低下のない運動器慢性痛を有する高齢者17名 (平均年齢77.4歳、女性9名)である。介入群は待機群と比べて遂行機能を含む認知機能 (タブレット型認知検査を含む)、身体機能において有意な完全は認められなかった。結果より遂行機能が痛みに与える影響はより長期的に観察して検証する必要性が考えられた。
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