研究課題/領域番号 |
17J05234
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
吉岡 克将 横浜国立大学, 工学府, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | テラヘルツ / 走査型トンネル顕微鏡 / 超高速分光 / ナノフォトニクス / ナノエレクトロニクス |
研究実績の概要 |
高強度の超短光パルスが物質とコヒーレントに相互作用する場合、重要な役割を担うのが、光パルスのキャリアエンベロープ位相(CEP)である。実際、CEPが積極的に制御されたレーザーパルスを用いることにより、化学反応や電子運動の超高速制御が実現されている。もしこのレーザーパルスを光の回折限界を大きく超えて集光することができれば、上記の超高速制御を単一分子や原子レベルで行うことが可能となる。そこで研究代表者は、CEP制御テラヘルツ走査型トンネル顕微鏡(THz-STM)を開発することにより、ナノ空間においてトンネル電子の超高速実空間制御を達成した。この技術をさらに発展させ、ナノ空間かつ超高速で物質を自在に操るためには、トンネル接合において形成されるTHz近接場を実験的に明らかにし、更には制御する手法の開拓が必要不可欠である。本研究では、THz-STMとCEP変調器を組み合わせることによりTHz近接場の実験的導出を初めて可能にした。さらに、THz波が駆動するトンネル電子のダイナミクスを明らかにするため、新たにTHz波のダブルパルスを発生させる光学系を構築した。これにより、THz波のダブルパルスの時間間隔とCEPを変化させることによって数十フェムト秒の分解能で時間分解計測を行うことが可能となった。さらに、金ナノ構造のイメージングを行うことによって、開発したTHz-STMの空間分解能が1 ナノメートルに達することが明らかになった。以上により、自在に波形の制御されたTHz近接場を利用し、数十フェムト秒の時間分解能かつ1 ナノメートルの空間分解能で電子や物質を制御することのできる装置が完成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の研究計画は、 1、THz波のダブルパルスを発生させる光学系を構築すること 2、これまで試料として用いてきた金属以外の系で電子運動の振る舞いを調べること であった。1に関してはダブルパルスを発生させる光学系の構築に成功しただけでなく、THz波のCEPを完全に制御することが可能になったため、自在なTHz近接場を創り出すことが可能になった。これにより、超高速かつナノ空間で物性を制御するという本研究の目標達成が大幅に近づいた。2に関しては、金属以外の試料において興味深い電子の振る舞いを観測しており、今後その詳細を明らかにしていく予定である。 以上より、本研究は当初の計画以上に進展していると結論づけることができる。
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今後の研究の推進方策 |
これまで走査型トンネル顕微鏡は大気中下で運用してきたが、新たに超高真空下で動作するTHz-STMを構築することで、安定性や空間分解能の大幅な向上を目指す。これにより、原子分解能での超高速物性制御が可能になると考えられる。その上で、探針増強電場を利用した物質の相変化などの制御を目指す予定である。
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