研究課題
本研究の目的は,モノへ抱く所有感がどのような仕組みで形成されるかを明らかにすることである。本年度の具体的な成果は下記である。(1) モノの所有感形成における行為主体感覚の役割を検討:行為主体感覚がモノの所有感にどのような影響を与えるかを検討した。実験の結果,対象への行為主体感覚が高い場合は,その対象に所有感を抱きやすくなることを明らかにした。また,自分の意志に由来する行為が所有感を高めることが判明した。これらの結果は,行為主体感覚は自己とモノを結びつけるような役割を担っており,この結びつきが所有感形成に寄与していることを示唆している。(2) モノの所有感形成における空間的距離の役割を検討:モノと自身の間の空間的距離が所有感にどのような影響を与えるかを検討した。実験では,自身の近傍か遠方に呈示された対象について,参加者はどの程度所有感を抱くかについて評価を行った。実験の結果,自身の近傍に呈示された対象の方が,所有感は高く評価された。この結果は,空間的距離が所有感形成の手がかりになることを示唆している。(3) 所有感の心理物理学的測定:自己に関与する対象は,それ以外の対象に比べて先に出現するように知覚される (優先入力効果)。この現象では基本的に恒常法などの心理物理学的測定法が用いられる。この優先入力効果を利用すると所有感を心理物理学的手法で測定可能かもしれないと考えた。実験では,参加者に自分のマグカップと他人のマグカップを呈示し,どちらが先に出現したかを判断させた。実験の結果,自身のマグカップの方が先に出現したように知覚されることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
関連する成果は国内外の学会にて随時発表を行った。また,(1)の研究については査読付き国際誌に投稿中である。他の2つの研究についても,査読付き国際誌に投稿準備中である。また,関連研究について,査読付き雑誌に8本の論文が掲載され,さらに1件の発表について発表賞を受賞した。計画とずれた点についても,別の手法を用いることで即時に対応した。これらの点を考慮すると,順調に進展していると考えられる。
引き続き,感覚および認知的要因の検討や,文化差研究の準備遂行,指標開発を行う。
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すべて 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 9件) 学会発表 (25件) (うち国際学会 4件、 招待講演 4件) 備考 (2件)
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