人工の自己駆動系のなかでも特に、界面張力を利用して自己駆動運動を行う樟脳粒について研究を行ってきた。30年度は、樟脳粒を水面に浮かべた系に関して、2次元円形領域に閉じ込めたときの運動について、また、樟脳粒を用いた回転子の運動について研究を行ってきた。 2次元円形の水面に樟脳粒を浮かべると、系の対称性より、樟脳粒が中心位置に静止する状態が存在する。29年度は、この静止状態がHopf分岐によって不安定化すると、安定な回転運動が現れることを解析的に明らかにした。30年度はその続きとして、解析計算で行なった方程式の縮約が妥当であるか調べるため、縮約前のもとの方程式を用いて数値計算を行い。解析結果と比較を行なった。その結果、解析的に得たHopf分岐点が妥当でことがわかった。 樟脳粒を用いた回転子の運動について実験的に調べるために、中心軸を固定した円形のプレートの縁に複数の樟脳粒を等間隔に取り付け、自発的に自転する回転子を作製し、実験を行なった。その結果、取り付けた樟脳粒が少ないときに自転運動が見られ、数を増やすと、ある個数以上で自転運動が見られず、静止するという分岐現象が見られることが明らかとなった。また、樟脳回転子の自発的な自転運動が見られなくなる個数は円形プレートの半径に依存することも明らかとなった。実験結果を受け、静止状態の安定性を議論することによって、樟脳回転子の自転運動について議論を行なった。数理モデルを解析的に縮約し、樟脳回転子の自転運動に関する常微分方程式を得た。静止した状態に対応する解の周りで線形安定性解析を行うと、樟脳の個数を変化させたときにピッチフォーク分岐のような転移を起こすことが明らかとなった。 以上、2次元円形領域内の樟脳粒の運動に関する結果、および、樟脳回転子の自転運動の分岐現象に関する結果をまとめた論文は、それぞれ、国際学術誌採択・出版された。
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