研究課題/領域番号 |
17J05283
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 龍平 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | 表面酸塩基 / プロトン輸送 / 酸化物 / 第一原理分子動力学計算 |
研究実績の概要 |
当研究の目的は、金属/酸化物担持触媒のCO2還元系について酸塩基及び酸化還元の観点から統括的に反応機構を明らかことである。金属/酸化物担持触媒のCO2還元は、ある種の電池反応の様なものと考えられる。すなわち、H2の酸化によるH+及び電子の生成(アノード反応)、生成したプロトンの酸化物表面での輸送(電解質)及び金属/酸化物界面上でのCO2還元反応(カソード反応)により構成されている。 したがって、CO2還元反応条件下の中間体が存在する酸化物表面のプロトン輸送特性及び酸塩基性の変化(pKa)の解析が重要であり、これに焦点を当てている。 平成29年度は、ギ酸及びCH3OH担持表面下の水和反応の第一原理分子動力学(AIMD)計算を行うことで、酸塩基分子吸着による表面水酸基のpKa変化について解析を行った。炭酸基終端の場合と同様、金属サイト上のH2O吸着種は結合状態解析から大きい変化はなく酸解離定数(pKa1)が一定であることを確認するとともに、酸化物イオンのpKa0は有機物の吸着に対して敏感に変化することが熱力学的な議論により確認された。また各有機物吸着の観察の結果から、表面の分子吸着によるLewis酸塩基的な中和反応の強さとこれに伴う吸着分子のプロトン解離のしやすさ(ブレンステッド酸性の発現)の比例関係を見出し、OVP解析よりH2O、CH3OH及びHCOOH吸着について、吸着分子と表面Zrサイト間の結合と分子内のO-H結合の挙動が共通のものであることを確認している。 またAIMD計算では解析困難な酸化物表面の堆積水和層内のH3O+のVehicle機構によるプロトン輸送について、電気化学測定と吸着等温線の測定より毛細管凝縮との関係を明らかにし、複合酸化物系とNH3-H2O雰囲気下での電気化学測定より表面酸塩基性とプロトン輸送の関係について検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のように、各分子内での表面相互作用と吸着分子のブレンステッド酸性については関係性が確認されており、今後は共有結合・イオン結合性の程度の異なる吸着分子間の比較を検討しているが、この解析のためのテスト計算は既に完了しているため。
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今後の研究の推進方策 |
上述の分子吸着に伴うブレンステッド酸性の発現の普遍的評価は、電気陰性度の異なる原子を含む分子間の結合を比較する必要がある。すなわち、イオン・共有結合性の程度の異なる吸着を評価する必要がある。したがって、今後はBond overlap populationの様な電子数に依存した議論でなく各結合のエネルギーの観点から計算を行い分子間の比較を行い普遍的な法則を見出すことを目指す。
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