本年度は電極電位による遺伝子発現制御系(電気スイッチ)として利用可能な高電位および低電位誘導型プロモーターの同定を行った。これまでの研究でArc system依存的に電極電位応答を示した遺伝子、およびArc systemについて最も多くの知見があるE .coliのArc regulonの上流配列についてプロモーター活性測定を行った。その結果、高電位誘導型プロモーターとしてPfeoA、低電位誘導型プロモーターとしてPnqr1を同定し、さらにプロモーター領域の最適化を行った。PfeoAはE .coliにおいてferrous iron transport proteinをコードする遺伝子のプロモーターである。本領域にはMR-1株のArcAが直接的に結合することが確認された。さらに本プロモーターは電位刺激を与えるとWTでは高電位でプロモーター活性が増加し、ΔarcAではWTの低電位と同程度のプロモーター活性を示した。以上の結果は高電位条件でArcAがPfeoA上流領域に結合し、下流の遺伝子の発現を正に制御することを示唆する。さらに5’-deletion 法によりArcA結合領域の同定を行った結果、既報の網羅解析の結果と同様にPfeoA-111とPfeoA-226の間にArcA結合領域が存在することが示された。Pnqr1はtype3 NADH dehydrogenaseをコードするnqr1のプロモーターであり、昨年度までの研究からArcAの制御下にあることが明らかになっている。PfeoAと同様に電位応答性について調べた結果、Pnqr1の活性は低電位で増加し、高電位で減少することが示された。また、ArcAを欠損させるとPnqr1の電位応答性が失われたため、本プロモーターの活性はArcAによって制御されていることが示された。次に5’-deletion法によりPnqr1上のArcA結合領域の同定を行った結果、Pnqr1-134とPnqr1-237の間にArcA結合領域が存在することが示された。
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