平成30年度は、変性リゾチームによる不活化機構を3つの柱に分けて詳細に解析し、期待以上の進展が得られた。 1つ目の柱として、変性リゾチームがノロウイルスに対する不活化効果を強く発揮する条件を探索し、その理由として示唆されるデータを示した。 2つ目の柱として、サイトカイン発現解析により宿主細胞によるリゾチーム・ノロウイルス反応物の認識の有無を検証した。これにより、リゾチームによる不活化作用がノロウイルスの感染過程におけるどの段階で起きているのかを明らかにした。 3つ目の柱として、ペプチドの置換体を用いた不活化ドメインの探索を実施した。既報ではノロウイルスの代替ウイルスであるMurine norovirus strain 1(MNV-1)に対して不活化効果を示すリゾチームの部分配列を明らかにしている。本研究では、この部分配列に任意の置換を加えた際のMNV-1に対する不活化効果を検証した。さらに、当該配列の含まれない他の領域についても合わせて抗ウイルス効果の有無を検証した。 これらのアプローチにより得られた成果は、2018年11月に開催された日本食品衛生学会第114回学術講演会にて口頭発表し、優秀発表賞を受賞した。当該発表賞は、食品衛生学会学術講演会で発表された演題のうち、口頭発表から2題のみ選出されるものである。 リゾチームは卵白に由来する無味無臭のタンパク質であり、食品中においてもその効果を維持しながら食味に影響を与えないという利点がある。本研究により得られた成果は、変性リゾチームをノロウイルスの不活化製剤として利用拡大するにあたり有用な知見になると考えられる。現在、得られた成果を投稿論文として執筆段階にある。
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