研究課題/領域番号 |
17J05519
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
森 愛美 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | strigolactone / biosynthesis / Lotus japonicus |
研究実績の概要 |
ストリゴラクトン生合成の最終段階におけるBC環形成酵素遺伝子の同定では、ミヤコグサMAX1産物として新規に18-ハイドロキシ-カーラクトン酸(18-HO-CLA)を同定した。18-HO-CLAのメチルエステル誘導体の安定同位体標識化合物を化学合成してミヤコグサ根への投与実験を行い、18-HO-CLAが5-デオキシストリゴール(5DS)に変換される生合成前駆体であることを明らかにした。さらに、5DSを生産できないミヤコグサLORE1挿入max1変異体が投与したCLA、18-HO-CLAから5DSを生産したことから、MAX1の下流にはCLAから5DSを生成する別の生合成遺伝子が存在することが示唆された。そこで、シロイヌナズナにおいてMAX1の下流で働く生合成酵素であるLBOのミヤコグサホモログの機能解析を行ったところ、ミヤコグサLBOはin vitroでの変換実験においてシロイヌナズナと同じ変換特性を示すものの、LORE1挿入lbo変異体の解析から5DS生合成には関与しないことが分かった。これらの実験に加え、ミヤコグサ根でリン欠乏条件下において顕著に発現が誘導される遺伝子を網羅的に探索するためにRNA-seq解析を行った。 水酸化SL生合成における早期水酸化経路の発見では、2、 3、 4、 18位水酸化CL安定同位体ラベル体の合成法を開発し、これらのうち、4-HO-カーラクトン(4-HO-CL)を用いたワタ根への投与実験により、ワタにおけるストリゴールの生合成は4-HO-CLを前駆体とせず、CLからまず5DSが生合成され、5DSが水酸化を受けることにより生成することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミヤコグサMAX1およびLBOの酵素変換実験とLORE1挿入変異体を用いた解析から、MAX1の下流に5DSを生成する環化酵素が別に存在すること、18-HO-CLAが5DSの生合成前駆体であることを明らかにすると共に、ミヤコグサではLBOは5DSの環化反応には関与していないことを明らかにした。これらの成果は、マメ科モデル植物においてCLから始まるSL生合成経路の一部が明らかになった初めての例であり、特に、仮想中間体とされてきた18-HO-CLAが実際に5DSの生合成前駆体であることを明らかにしたことは大きな成果である。 水酸化SL生合成における早期水酸化経路の発見では、2、 3、 4、 18位水酸化CL安定同位体ラベル体の合成法を開発した。次年度にはさらに多くの植物の新規生合成経路の探索を行うことができる。ワタではCLがまず5DSに変換され、これが水酸化を受けることでストリゴールが生成することを明らかにした。これは当初期待していた早期水酸化経路ではなかったものの、初めてSLが単離された植物であるワタのSL生合成経路を解明したものとしては意義深いものである。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画では、MAX1生成物であるCLAを5DSに変換する酵素を探索する予定であった。今年度の研究結果において、ミヤコグサMAX1の最終生成物はCLAではなく18-HO-CLAであることが明らかになったが、MAX1の下流の環化酵素を探索するという研究テーマに変更はない。これまでに5DS環化酵素の候補遺伝子の一つであるミヤコグサLBOの機能解析を行ったが、5DSの生産には関与していないことが明らかになった。そこで今後も継続して候補遺伝子をクローニングし機能解析を行う。RNA-seq およびqRT-PCRを用いた遺伝子発現解析により、ミヤコグサの既知SL生合成遺伝子はリン酸欠乏条件下において発現量が増加することが分かった。このことからBC環形成酵素遺伝子も同様の発現変動を示す可能性が高いと考えられるため、RNA-seqデータを詳細に解析して候補遺伝子を絞り込む。選んだ100種類ほどの候補遺伝子をクローニングし、組み換え酵素による18-HO-CLAの変換実験を行い、LC-MS/MSで5DSの生成について分析する。基質となる18-HO-CLAも化学合成する予定である。また、イネにおける4DO生合成阻害剤であるTIS108についてミヤコグサで5DS生合成阻害について調べ、MAX1の下流のBC環形成酵素遺伝子の探索に利用できるか検討する。
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