研究課題
BC環形成酵素候補遺伝子の絞り込み:初年度はミヤコグサの既知ストリゴラクトン生合成遺伝子はリン酸欠乏条件下において発現量が増加することが分かったため,次世代シークエンサーを用いたRNA-seqによる発現解析によって新規ストリゴラクトン生合成遺伝子を絞りこんだ。しかしながら、BC環形成酵素の候補遺伝子は多く、目的の酵素を見つけるには,それ相応に時間がかかる。よって、本年度も継続して目的遺伝子の探索を行った。探索方法は、初めにレトロトランスポゾンLORE1 を利用したミヤコグサの遺伝子タギング集団より、候補遺伝子の遺伝子欠損株を入手し、その欠損株が5DSを生産しているかを解析した。早期水酸化経路の仮想前駆体および生成物の有機合成:現在単離されているストリゴラクトンの多くは水酸化修飾されたストリゴラクトンである。これまで、水酸化ストリゴラクトンの生合成は無修飾ストリゴラクトンの水酸化によって行われると考えられてきたが、近年、無修飾ストリゴラクトンを経由せずに水酸化ストリゴラクトンを生産する植物も存在することが分かってきた。このことにより水酸化ストリゴラクトンを生成する新規の生合成経路の存在が強く期待され、その前駆体は水酸化カーラクトンであることが予想される。初年度は早期水酸化経路の仮想前駆体となる水酸化カーラクトンの合成法を開発し、それを用いて安定同位体標識化合物を調製した。また、ワタにおいては、早期水酸化経路ではなかったものの、カーラクトンがまず5DSに変換され、これが水酸化を受けることでストリゴールが生成することを明らかにした。本年度は、有機合成した安定同位体標識水酸化カーラクトンを順次様々な植物種の根の取り込み実験に供した。
2: おおむね順調に進展している
前年度までの研究で,ミヤコグサの5DSの生合成経路にはMAX1の下流に新規の生合成酵素が存在することが明らかになった。今年度は,その新規の生合成酵素遺伝子の発見を目的として,RNA-seqを用いた遺伝子発現解析による候補遺伝子の選定と当該候補遺伝子の5DS生合成への関与をレトロトランスポゾンタグラインLORE1挿入変異体の表現型解析により行った。リン酸過剰条件によって発現が低下するP450や2-オキソグルタミン酸ジオキシゲナーゼなどの水酸化酵素遺伝子についてLORE1挿入変異体を取り寄せ,5DSおよびlotuslactoneの生産能について解析を進めた結果,それぞれのSLについて欠損変異体を1株ずつ取得することに成功した。これら変異体はそれぞれ他方のSLの生産能を維持していたことから,MAX1の下流に位置することが分かった。5DS欠損変異体について解析を進めたところ,本酵素は18-HO-CLAの下流にあることも明らかとなった。また,これら5DSおよびlotuslactone生合成酵素は18-HO-CLAを基質にする可能性が考えられたため,18-HO-CLAの合成法を開発した。以上のように、研究は着実に進展しており,代表として2件,共同研究者として1件の学会発表を行うなど,学会活動も精力的に行っている。また,本研究と関連した研究において,共著論文3報を発表しており,本研究分野への貢献度も極めて高い。
今年度の特別研究員研究報告書において,ミヤコグサにおけるMAX1の下流における5DSおよびlotuslactoneに変換する経路に着目し,新規SL生合成遺伝子の探索を行った。リン酸栄養条件によって発現変動する水酸化酵素をRNA-seqによって解析し,候補遺伝子に対応するミヤコグサにおけるレトロトランスポゾンタグラインLORE1挿入変異体を取り寄せ,それらのストリゴラクトン生産能を確認するスクリーニングを行った。その結果,5DSの生産能を失ったスクリーニングNo.47の変異株,およびlotuslactoneの生産能を失ったスクリーニングNo.17の変異株をそれぞれ入手することができた。また,これら5DSおよびlotuslactone生合成酵素は18-HO-CLAを基質にする可能性が考えられたため,18-HO-CLAの合成法を開発した。三年目も継続して5DSおよびlotuslactone生合成遺伝子の機能解析を続けていく予定である。5DSおよびlotuslactone生合成酵素のin vitro変換実験を行うために,それら遺伝子の全長を明らかにする5’-および3’-RACEクローニングを行う。5’-末端および3’-末端を繋ぎ合わせ全長のORFシーケンスにしたのちに,ORFクローニングをおこなって,それぞれ酵母と大腸菌に導入する。in vitroの組み換え酵素変換実験は,18-HO-CLA,18-HO-MeCLA, AB-COOMe-Dなどの既存化合物を基質に用いて,生成物は既知化合物以外についても慎重に見ていく。また,5DSおよびlotuslactone生合成遺伝子欠損LORE1タグラインを毛状根の形質転換し,回復実験も行う。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (3件)
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