研究課題/領域番号 |
17J05600
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
村上 由美 慶應義塾大学, 法学部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | フランス文学 / フランス詩 / 舞踊 / 19世紀 / マラルメ |
研究実績の概要 |
本研究課題「マラルメにおける舞踊詩学の批判的検討――ヴァレリー、クローデルを通した史的再構築」における目的として、次の三点を設定している。第一に、19世紀フランスの詩人ステファヌ・マラルメの舞踊の詩学を、より広範な文学史および舞踊史の文脈に位置づけ、その意義を明らかにすることである。第二に、他の作家(ポール・ヴァレリーやポール・クローデルなど)からの批判的な視点を導入することで、この詩人の舞踊詩学について、どの点が評価され、後世に引き継がれていったのか、また何が問題であったのかを分析し、この舞踊思想がもつ限界ならびに問題点を明らかにすることである。第三に、上記の分析視角を、マラルメの後継に位置する詩人たち(ヴァレリーならびにクローデル)の舞踊思想を分析し考察する際に応用することで、他の作家研究に新たな光を当てることである。 本研究の取り組みは、個別研究の枠から19世紀末~20世紀前半の文学史、ならびに舞踊史研究の枠へと置き直してゆく試みである。そして最終的に、舞踊と文学を結ぶ観点から、新たに文学史的文脈の中でマラルメ像を刷新し、文学史再考を促すことを目的とするものである。 以上の目的のもと、2017年度は第一の点に取り組んできた。とりわけ、今年度は海外の資料調査および資料収集を集中的におこなった。この調査において、19世紀末から20世紀前半の舞踊をめぐる言説を収集することができた。また、パリ国立オペラ座が所蔵している19世紀舞踊公演に関する歴史的資料にアクセスすることで、マラルメが劇評を書いた当時の舞踊が詳細にわかるようになり、マラルメの発言の裏に何があるのかを知るための手がかりが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、「研究の概要」の項目で述べた本研究課題のうち、第一の点について集中的に取り組んだ。すなわち、19世紀フランスの詩人ステファヌ・マラルメの舞踊の詩学を、より広範な文学史および舞踊史の文脈に位置づけ、その意義を明らかにすることである。この課題に取り組むため、海外の資料調査および資料収集を集中的におこなった。この資料調査とは、フランス国立図書館が所蔵する草稿および一次資料調査、特にバレエに限定して19世紀末の新聞雑誌から当時の劇評を調べることである。調査は順調にすすめることはできたが、分析と考察をおこない、発信するまでには至らなかった点は大いに反省すべきである。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、こうした調査と資料収集に専念せざるを得なかったゆえ、研究発表および論文執筆が遅れていることは、大いに反省すべき点である。今後は、上記の資料を報告者の視点のもとに構築しなおし、そこから得られた成果を、国内外に研究成果として発信してゆくことが急がれる。上述の調査から得られた資料の再構築のもと、マラルメと同時代の劇評とマラルメの評論とを比較検討し、相互の影響関係の有無を探ってゆきたいと考えている。
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