研究課題/領域番号 |
17J05691
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
根本 雅也 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 原爆 / 戦争の記憶 / 日本 / アメリカ / 戦争体験 |
研究実績の概要 |
本研究は、戦争体験の普遍化が持つ力学を解明するため、アメリカにおける「ヒロシマ・ ナガサキ」の諸相を探ることを目的としている。そのために、本研究ではアメリカにおける(a)反核平和運動や地域のコミュニティの活動、(b)原爆関連の教育、(c)アメリカ政府及び民間における「和解」の活動、(d)在米被爆者の社会運動と生活史について調査研究を実施する。 平成29年度は、(d)在米原爆被爆者の運動と生活史に焦点を当て、サンフランシスコ周辺で、現地に住む原爆被爆者への聞きとり調査を行うとともに、(a)原爆投下日の8月6日と9日に関連した行事に参加し観察を行った。サンフランシスコにいる原爆被爆者は、アメリカで生まれ広島で被爆し、戦後にアメリカに戻った帰米二世もいれば、戦後にアメリカに渡った者もいる。そうした被爆者の生活史を、時間をかけて聞きとりを進めた。また、原爆に関連する行事というのは、原爆投下を肯定的に捉えたものではなく、原爆による被害や慰霊に焦点を当てたものである。本研究では、その行事の中でヒロシマ・ナガサキがどのように位置付けられているのかを探った。 他方、2018年3月にはワシントンDCを訪れ、National Museum of American Historyなどのスミソニアン博物館を回った。それを通じて、核兵器や日本との戦争がどのように語られているのかを調べ、原爆投下や日本の戦争に対する公的な物語を検討した。 このような調査を実施する一方で、これまでの研究成果の発表として、韓国のソウルで行われたAAS-in-Asiaなどに参加し口頭発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、アメリカにおける「ヒロシマ・ ナガサキ」の諸相を探るため、(a)反核平和運動や地域のコミュニティの活動、(b)原爆関連の教育、(c)アメリカ政府及び民間における「和解」の活動、(d)在米被爆者の社会運動と生活史について調査研究を実施する。 平成29年度は、サンフランシスコにおいて、(a)反核平和運動や地域のコミュニティの活動、および(d)在米原爆被爆者の運動と生活史について調査を行った。一方、当初は年度後半にハワイを訪れ、 (c)アメリカと日本の両政府による「和解」の推進、および (d)ハワイ在住の原爆被爆者の生活史について調査を実施する予定であった。しかし、2018年3月にワシントンDCで行われるAASの研究大会に参加・発表できることとなったため、当初の予定を変更し、ワシントンDCにて調査を行うことにした。スミソニアン博物館を中心とした原爆投下や日本との戦争についての語りを調べるこの調査は、上記(a)~(d)の基礎となる作業と位置付けられる。 また、当初は在米被爆者についての投稿論文を行う予定であったが、こちらは2018年7月にカナダのトロントで行われる世界社会学会において口頭発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の計画に大幅な変更はないため、今後も上記(a)~(d)について引き続き調査研究を実施していく。 平成29年度中に実施できなかったハワイでの調査を行い、現地に住む原爆被爆者への聞きとりを実施するとともに、アメリカと日本の両政府そして民間による「和解」がどのように推進されてきたのか(いないのか)を探り、その中における原爆投下の位置付けを検討する。 また、(b)アメリカにおける原爆関連の教育について調査を行う。マサチューセッツにあるFive College Center for East Asian Studiesを訪問し、関係者への聞きとりとこれまでのプログラムについて資料収集を行う。また、このセンターを通じて、原爆に関する教育を行っている教師を紹介してもらい、彼らの実践についてインタビューなどを実施する。 一方で、これらの調査研究の成果を発表していく。2018年7月には世界社会学会において在米原爆被爆者の生活史について発表し、同月に日本で行われる日本国際文化学会においてアメリカにおけるヒロシマ・ナガサキの「受容」を口頭で発表する。
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