研究課題/領域番号 |
17J05734
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐々木 郁雄 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 有機ケイ素化合物 / 遷移金属触媒 / シリレノイド / 環化反応 / 合成化学 |
研究実績の概要 |
反応性ケイ素化学種「シリレン」を用いた含ケイ素環状化合物の新規合成法開発を目的として、シリレンの新規発生法および有効な触媒系、基質構造等の探索に取り組んでいる。平成29年度は、交付申請書研究実施計画に記載した、研究項目①「シリレンの新規発生法に基づくアルキン、アルケン、シリレンの[2+2+1]環化付加反応の開発」を実施した。シリルボランと1,6-エンインとの反応に焦点を絞り、触媒金属、配位子、反応溶媒等について精査した結果、二座リン配位子を有するロジウム触媒の存在下、1,2-ジクロロエタン中反応を行うことで、含ケイ素環状化合物が高収率で得られることを見出した。反応機構に関する実験から、本反応はロジウムシリレノイド錯体の形成を経て進行していることを明らかとした。これは、シリレン錯体の形成を伴って進行する従来のパラジウム触媒反応とは対照的であり、興味深い反応形式であるといえる。これらの成果は、医薬品開発や機能性材料開発において重要である含ケイ素環状化合物の効率的かつ精密な生産に資するのみならず、ロジウムシリレノイドの素反応を基軸とした新規反応群の創出を推進する波及効果の高い基盤的知見であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1,6-エンインとシリルボランの[2+2+1]環化反応の開発において、有効なロジウム触媒と反応条件を見出した。これに加えて、当初の想定とは異なる機構で反応が進行することを明らかとした。ロジウムシリレノイドの形成を伴うこの新たな機構の発見は、高い発展性が見込まれる特筆すべき成果であり、今後の研究推進に大きく寄与すると考えられる。以上の点から、本研究は当初の計画以上に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
ロジウムシリレノイドの形成を基軸とする触媒反応の設計について検討を進め、適用できる基質構造の拡張をはかる。また、キラル配位子を用いたエナンチオ選択的環化反応に取り組むとともに、二種類の不飽和基質とシリルボランの分子間三成分環化反応へ展開する。
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