本研究課題では,自然エネルギーの大量導入の状況下での安定的な電力系統の設計を目指して,個々の自然エネルギーの制御則の構築と系統への接続規則を考え る.この設計問題を一度数学的に抽象化し,複数の小規模なサブシステムから構成される大規模システムの制御理論の問題として捉える.古くから研究されてき たロバスト制御理論では,新たなサブシステムを接続する前の大規模システムが最良であるとして,接続されたとしても安定性や制御性能を劣化させない設計論 となっていた.一方で,本研究で目指す設計論では,そのような考え方ではなく,新たなサブシステムを接続するほどシステム全体の性能を厳密に向上させるよ うな大規模システムの設計論の構築を目指す. 今年度はその目標の達成に向けて,各サブシステムが積分器を有することに着目した.複数の同一のクラスタから構成される大規模システムを考える.ここで,各クラスタ内部では複数のサブシステムが存在し,各々が相互結合しネットワークを形成している.各サブシステムは,積分器と安定なダイナミクスのカスケード結合したシステムとして記述する.このとき,各クラスタ内部のサブシステムの数を増加させるとき,クラスタ間のネットワーク結合が疎でクラスタ内部のサブシステム間のネットワーク結合が密であるほど大規模システム全体の外乱抑制性能は向上することを数値的に示す.加えて,各クラスタ内部のサブシステムはすべて同一の特性を持ち,各クラスタ内部のサブシステムの数は極限的に増加することを仮定する.このとき,サブシステム間のネットワーク結合が完全グラフで与えられるとき,すなわち,すべてのサブシステムが相互に結合しているとき,大規模システム全体の外乱抑制性能は最高の性能を達成することを理論的に示した.
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