研究課題
人口増加や生活水準の向上による世界規模の真水不足は深刻な問題であり、先行研究として蒸留・逆浸透などによる海水の脱塩が挙げられる。しかし、高い燃料コストやプロセスでの高圧力が必要であり、発展途上国では上述の脱塩を行うことが困難である。そこで本研究では、大気中の水滴をターゲットとした大気中水分の無動力捕集機構を有するデバイスの創製を着想した。大気中の水分をターゲットとすることで水源の運搬設備を必要としない、持続的な水分捕集を行う。本デバイスは表面に微小空間を有するナノワイヤ構造を利用することで、小型のデバイスでの水分捕集機構の構築を行う。微小空間では、Kelvinの式から水滴凝結が起こりやすいことを用いて、ナノワイヤ表面の微小空間への水分子の捕集を行う。捕集した水分子を電圧印加によるエネルギー勾配を用いることで、微小空間から水滴として取り出し、水滴の回収を行う。常温(15-25℃)では湿度(~95%)下でなくとも、20 nm以下の空間において水滴凝結が起こるため、20 nm以下の微小空間をナノワイヤ上に作製することを目指す。本年度では、水熱合成による酸化亜鉛ナノワイヤ上への微小空間の作製検討を行った。まず、酸化亜鉛ナノワイヤを加熱処理し、水熱合成することでナノワイヤ表面上へ微小空間を作製した。本年度は、水熱合成の条件検討を行い、酸化亜鉛ナノワイヤ上に微小空間を作製可能かどうか確認した。電子顕微鏡観察から、作製したナノワイヤがコア(酸化亜鉛)/シェル(微小空間)構造であることを確認した。なお、シェル構造の厚みは10 nm程度であった。また、フーリエ変換赤外分光光度計からナノワイヤ上への微小空間の組成確認を行ったところ、微小空間を構成する物質由来のピークを確認したため、ナノワイヤ上への微小空間の作製に成功したことが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
当初目標としていた、親水性・撥水性表面によるヤヌスナノワイヤの作製は、安定な撥水性表面の作製が難しいことから、断念することとした。このため計画を変更し、微小空間で水分が凝縮しやすい性質を利用した、ナノワイヤデバイスの創製を行うこととした。本デバイスでは、ナノワイヤ表面に微小空間を作製し、大気中の水分を捕集する。捕集した水分子は電圧印加によるエネルギー勾配により微小空間から水滴として取り出し、回収を行う。本年度では、微小空間の作製検討を行い、ナノワイヤ上への修飾ができていることが示唆された。来年度では、詳細な確認を行うとともに、微小空間修飾の詳細検討を行う。
X線により微小空間の結晶構造を評価することで、微小空間の制御を行うとともに、フーリエ変換赤外分光光度計により水分子由来のピークを確認することで、本微小空間中に水分子を捕捉可能であることを確認する予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
ACS Sensors
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