研究課題
人口増加や生活水準の向上による世界規模の真水不足は深刻な問題であり、先行研究として蒸留・逆浸透などによる海水の脱塩が挙げられる。しかし、高い燃料コストやプロセスでの高圧力が必要であり、発展途上国では上述の脱塩を行うことが困難である。そこで本研究では、ナノワイヤ構造体を用いた大気中の水滴を無動力で捕集可能なデバイスの創製を着想した。大気中の水滴をターゲットとすることで水源の運搬設備を必要としない、持続的な水滴捕集法の構築を目指す。本デバイスでは、水分捕集のための微小空間の創出と回収水分を水滴として回収するための機構構築が必要である。本年度では、水滴回収に向けた、表面の濡れ性制御を行った。水滴の回収は、表面の親水性(接触角 < 90度)・疎水性(接触角 > 90度)を制御することで、表面自由エネルギーに基づいて水滴を移動させることで達成する。これまでに、二酸化チタンを成膜したナノワイヤ構造体を作製することで、360日以上親水性を持続可能な表面を創製した。本年度では、リン酸基を有する有機分子を二酸化チタン修飾ナノワイヤ構造体上に修飾することで、疎水性表面を開発した。ナノワイヤ構造体を有する表面は高いラフネスを有しており、Wenzel式に基づいて表面の濡れ性を強調することが可能である。このため、疎水性の有機分子をナノワイヤ構造体上に修飾することで、高い接触角を示す疎水性表面を作製することができ、本年度では疎水性表面の創製を目指した。
2: おおむね順調に進展している
これまでに、二酸化チタンを成膜したナノワイヤ構造体を作製することで、360日以上親水性を持続可能な表面を創製した。本年度では、リン酸基を有する有機分子をナノワイヤ構造体上に修飾することで、疎水性表面を開発した。水熱合成により酸化亜鉛ナノワイヤを作製し、原子レベルで膜厚制御して二酸化チタンを成膜した。続いて、二酸化チタン成膜ナノワイヤ表面上にリン酸基を有する有機分子を修飾することで、疎水性表面を作製した。親水性・疎水性の評価を水への接触角によって行ったところ、有機分子修飾により大幅に接触角が増大し、表面は疎水性を示した。以上より、有機分子をナノワイヤ構造体に修飾することで、疎水性表面の創製を達成した。
有機分子修飾条件の最適化により、更なる高疎水性表面の作製を目指す。また、表面の濡れ性(親水性・疎水性)を制御することで、表面自由エネルギーに基づいて液滴回収が可能な表面の創製を進める。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
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