本年度は、水滴回収のための高機能化疎水性表面の創製に向けて、ナノワイヤ構造体上へ修飾する有機分子の配向分析を行った。本研究では、ナノワイヤ構造体を用いた大気中の水滴を無動力で捕集可能なデバイスの創製を着想し、これまでに親水性(接触角<90度)・疎水性(接触角>90度)表面の開発を進めてきた。昨年度では、ナノワイヤ構造体表面上への長鎖アルキル(C=18)リン酸分子修飾により、疎水性表面を開発した。しかしながら、当該疎水性表面の示す接触角は110度であり、効率的な水滴回収のためには、より高い接触角を示す疎水性表面(接触角>150度)が必要である。疎水性などの機能発現において、分子の配向性は重要因子の一つであるため、構造体表面上へアルキルリン酸分子を制御して修飾すること要求される。そこで、本年度では、短鎖アルキル(C=1)リン酸分子をモデルとして、ナノワイヤ構造体表面上での配向分析を行った。 水熱合成により作製した酸化亜鉛ナノワイヤ構造体表面上に二酸化チタンを成膜し、短鎖アルキルリン酸分子を修飾した。親水性・疎水性を評価したところ、短鎖アルキルリン酸分子修飾による接触角の低減を確認したため、疎水性表面の創製のためには長鎖アルキルリン酸分子が必要であることが分かった。続いて、赤外分光法を用いて有機分子による赤外吸収を測定したところ、ナノワイヤ構造体表面上に短鎖アルキルリン酸分子が修飾されたことを確認した。面内・面外方向の赤外吸収スペクトルから配向性を分析すると、短鎖アルキルリン酸分子はランダムではなく、ナノワイヤ構造体表面上に一定角度に配向して吸着したことを示した。以上より、短鎖アルキルリン酸分子をモデルとした、ナノ構造体表面上での分子配向を明らかにした。
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