研究課題
採用第1年度では、ザンビア共和国鉛鉱床地域Kabweでの鉛汚染の影響を正確に捉えるために、Kabwe全域の家庭(父親、母親、子供)を対象とした疫学調査を行った。約500家庭1250名から血液及び糞便・尿サンプルが提供された。簡易血中鉛濃度測定器(LeadCare II)を用いて現地で得られた結果から、鉛汚染はKabwe全域には広がっておらず、鉱床周辺で特に汚染が深刻なことが示唆された。採取した試料はザンビア保健省の輸出許可が得られ次第、日本に輸入し、解析を行う予定である。鉛中毒は特に乳幼児への影響が強いとされ、鉛中毒の母親からの授乳も主な曝露源だと考えられており、母子の鉛曝露の関係性を解明するべく、採用第3年度に予定していたサンプリングも行った。約440ペアの母子から、血液及び母乳、子供の糞便が提供された。簡易血中鉛濃度測定器を用いた結果では、母親の血中鉛濃度に比べ、乳幼児の方が有意に高いことが明らかになった(p < 0.05)。また、母子の血中鉛濃度に有意な正の相関が見られたことから、母乳を介した乳幼児への鉛曝露が示唆された(p < 0.01, ρ = 0.6)。試料はザンビア保健省の許可のもと既に輸入が完了しており、順次解析を行っていく予定である。乳幼児への鉛曝露を防ぐため、授乳期の母親へのキレーション治療方法の確立が必要であると考え、動物モデルを用いたキレーション治療の効果の検証を採用第2年度に予定している。調査を行っている中で、鉛曝露とヒト及び動物の行動に関係性があると考え、基礎情報を集めるべく、GPS装置を鉱床周辺地域で放し飼いで飼育されているイヌに装着し、その行動と鉛曝露の関係性に関して調査を行った。約100頭のイヌから行動データを及び血液サンプルを採取した。試料は、ザンビア農水省の許可のもと既に輸入が完了しており、現在解析を行っている。
2: おおむね順調に進展している
研究計画で採用第1年度に予定していたサンプリングと併せて、第2年度及び第3年度で予定していたサンプリングの一部を行うことができた。輸入が完了した試料より、順次解析に着手している。以上のことから、おおむね順調に進展していると言える。
ザンビアから既に輸入が完了している試料の解析を引き続き行っていく予定である。疫学調査のヒト試料は日本に輸入出来次第、解析を行う予定である。ヒトの母子の鉛暴露に関する研究に関しては、既に採取済みである試料の解析結果を基に、定期サンプリングを立案する。動物モデルを用いたキレ-ション治療に関しては、GPSを用いたイヌの行動と血中鉛濃度の関係性に関する研究と並行して行っていく予定である。
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BioRxiv
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https://doi.org/10.1101/096164