研究課題/領域番号 |
17J05794
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
金原 明子 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | パーソナルリカバリー / リカバリー促進因子 / 質的研究 / リカバリー支援プログラム |
研究実績の概要 |
本年度は、インタビュー調査の質的研究結果に基づき、リカバリー促進因子である家族など身近な人とのリカバリー目標の共有を取り入れた心理社会的支援プログラムの開発を開発し、実現可能性について検討を行った。対象者は、精神疾患をもつ18歳以上の患者とした。今年度は、プレ調査の支援プログラムを実施した。実施内容は、日本語版Personal Values Questionnaire II質問紙(PVQ-II, 土井ら、2014)などで、本人が人生の中で大切についていることの意識化・文章化を行い、それを家族など本人と最も身近な人と共有し、本人が周囲と共に目標を考え、アクションプランを実行するプログラムを行うというものである。支援プログラムの効果の確認に、アウトカムとして、リカバリー評価尺度QPR-J(Kanehara 2017)や、WHO 5 Well-being 尺度や、WHO Disability Assessment Schedule 2.0 を支援プログラムの実施前・実施後・フォローアップ3か月後に評価した。結果の一部について、The 11th International Conference on Early Intervention in Mental Healthにて発表を行った。
また、すでに実施したリカバリーの構成因子及びリカバリー促進因子についてのインタビュー調査の質的研究について、英語論文執筆を行っている。リカバリーの構成要素として、パーソナルリカバリーに関する文献レビュー(Leamy M 2011)で抽出された、「人や地域とのつながり」「自分らしさや人生の意味を再構築して生きていること」「エンパワメント」などのテーマが得られた。また、日本の文化や社会的規範からの影響を受けた「自分らしさ」が疾患を経て変化していく様子がみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インタビュー調査に基づいて、心理社会的な支援であるリカバリー支援プログラムを開発した。ピアスタッフと共に、プレとして4名の協力者に支援プログラムを実施し、事前評価・事後評価・実施3か月後のフォローアップ評価を行った。
結果の一部を、”Exploring the feasibility and acceptability of recovery-focused psychosocial intervention for adolescent and young adults with mental illness: Trial protocol”というタイトルで、The 11th International Conference on Early Intervention in Mental Healthにおいて発表した(2018年10月)。
また、質的研究については、質的研究の専門家からスーパーバイズを受け、論文執筆を行っており、概ね期待通り研究が進展した。
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今後の研究の推進方策 |
統合失調症をもつ患者30名に対して行ったインタビュー調査の質的分析結果について、英語論文執筆を行い、国際学会・学術誌等で発表する。
質的研究で明らかになったリカバリー促進因子を基に開発した心理社会的支援プログラムについて、プレ実施の振り返りをもとに、微修正を行い、効果検証研究を行う。デザインは、層別無作為化比較試験とし、東大病院精神神経科・都内及び近郊のクリニックデイケアに通所している精神疾患をもつ患者を対象とする。評価は、事前(介入直前)、事後(介入終了直後)、フォローアップ(介入修了後3か月後)の3回評価する。関連施設にて、協力者を募り介入研究を実施する。介入群には通常の外来治療に加え、介入支援を行い、対照群には通常の外来治療・デイケア通所などを行。事前・事後・フォローアップの評価について、介入群と対照群について、2群間の比較を行う。 得られた成果について、論文執筆・投稿し、国内外の学会にて成果発表を行う。また、ガイドライン等を作成し、普及啓発に努める。
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