研究実績の概要 |
本年度は、リカバリープロセスの構成要素と、その促進因子について質的分析を進め、論文執筆を行った。対象者は、16 歳以上、精神疾患をもつ人とした。語りの分析方法は、テーマ分析を採用し、フレームワークを用いた分析(Gale et al., 2013)を行った。コーディングフレームワークは、 CHIME フレームワーク(Leamy et al., 2011)を用いた。これらのフレームワークごとの語りの出現数をカウントし記述した。 本研究においては 30 名の時点で、理論的飽和が生じたと考えた。参加者の平均年齢は、40.4 歳であった。性別は 46.67%が女性であった。参加者のうち、50.0%が統合失調症をもっていると回答した。 リカバリー体験の構成要素としては、既存のCHIME フレームワーク以外のテーマは抽出されなかった。テーマの中では、新たなカテゴリーが抽出できた。テーマ1:つながり(Connectedness)の中では 「他者への共感」が新たに抽出され、テーマ3:アイデンティティ(Identity)の中では 「社会規範によって形成されたものではないアイデンティティの再形成、再定義」が新た に得られた。テーマの出現数では、「つながり」の出現数が最も多かった。リカバリー体験の促進因子で、既存の先行研究で得られなかった項目は「小児期のポジティブな体験(positive childhood experiences)」であった。 考察を加えて、論文執筆を行った。また、結果の一部を“7th European Conference on Schizophrenia Research (ECSR)”において、ポスター発表した。また、結果の一部について、「精神医学」に掲載された。
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