研究課題/領域番号 |
17J05887
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
髙木 悠花 東京大学, 大気海洋研究所, 特別研究員(PD) (10785281)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 浮遊性有孔虫 / 光共生 / クロロフィル蛍光測定 / 共生藻 |
研究実績の概要 |
本研究は,浮遊性有孔虫の「光共生度」が,海域の生産性(動植物プランクトン密度)によって決定される,という仮説の検証を起点とし,最終的には,浮遊性有孔虫の光共生性を間接指標とした古海洋の動植物プランクトンの密度プロキシを創設することを目的としている. 「光共生度」の算出にはまず,現生浮遊性有孔虫の光共生性を把握することが不可欠であるが,光共生の有無すら未検討である種も多い.そこで平成29年度はまず,研究航海に参加し,試料採集,観測データの取得を集中的に行った.なお,航海開始前には,使用機器の調整,動作試験,検量線作成等を行う目的で,神奈川県真鶴町の横浜国立大学臨海環境センターにてプランクトンネット試料採取を実施し,事前実験を行っている.本年度は,ドイツ船R/V Meteor(M140次航海)および学術船白鳳丸(KH-17-4次航海)による各約1ヶ月の航海に参加した.船上では,閉鎖式プランクトンネットで試料を採取し,実体顕微鏡を用いた有孔虫種の単離・同定・サイズ計測を実施したうえで,アクティブ蛍光法(高速フラッシュ励起蛍光法)を用いたクロロフィル蛍光の変化を測定した.下船後陸上では,光合成活性,光の吸収効率を個体ごとに整理し,蛍光データの解析を継続して行い,種ごとの傾向を確認した.さらに,有孔虫サイズとクロロフィル濃度の定量的関係性を検証した.上記に加え,白鳳丸航海においては,環境情報としての植物プランクトン密度解析のため,200m以浅の水試料を採取し,濾過後のフィルターサンプルを冷凍保存している.解析は今後実施していく予定である.なお,浮遊性有孔虫の光共生関係についてまとめた研究成果については,上記航海によって得られたデータと,これまでに取得していたデータとを合わせて論文を執筆しており,まもなく国際誌に投稿できる予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究航海による試料採取,船上でのデータ取得はおおむね順調に進んでいるうえ,これまでに取得したデータと合わて論文をとりまとめる段階に至っている.なお,当初の予定であった, 光共生有孔虫細胞内の藻類の18S rRNA遺伝子解析については,本年度は手法の確認にとどまっているが,船上で採取した有孔虫試料は研究機関で冷凍保管しているので,次年度以降ただちに実験に着手できる状況にある.
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は,前年度着手できなかった,実際のサンプルを用いた遺伝子実験を開始し,浮遊性有孔虫がどのような藻類と共生関係を築いているかを特定していく.また航海で採取した同植物プランクトンについての定量も進め,海域ごとの密度を算出していく予定である.
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