本研究の目的は、原子レベルの分解能を持つ核磁気共鳴検出を実現し、単一分子イメージング・構造解析の基盤技術を開発することである。ダイヤモンド表面近傍の窒素空孔欠陥(NVセンター)を量子磁場センサーとして利用し、外部分子中のプロトンや炭素同位体核スピンの高感度な検出や核種の決定、核スピンの位置決定技術の実現を目指した。昨年度までに、本研究の核となる、核種決定や核スピンの位置決定はプロトコル開発やその実験的検証を行った。 外部核スピンの検知や分子構造解析には、核スピン検知の感度と分解能をさらに高めることが求められる。今年度は、従来の計測シークエンスに、NVセンターの禁制遷移を操作する為の複合マイクロ波パルス法を取り入れ、超微細相互作用の制御を行うことで課題に取り組んだ。磁気モーメントの大きな禁制遷移によって相互作用強度を高めて、核磁気分極の効率を1.6倍向上した。また、センサーと核スピン間の相互作用を時間平均的に打ち消すことで、核スピン歳差周波数の不均一線幅の抑制にも成功した。その過程で、極少数のプロトンの歳差運動信号を直接的かつ曖昧さなく検知することに成功した。 加えて、昨年度、別方針として示唆したFPGAフィードバック計測についても、受入研究室のメンバーと共同して開発を進めた。FPGA制御によって従来のNV中心計測シークエンスを網羅的に再現した。また、標的となるプロトンスピンの探索や、FPGAの動作検証に有用な小型テーブルトップ共焦点顕微鏡装置の主要デザインを行い、その構築に貢献した。
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