研究課題/領域番号 |
17J05926
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
松本 凌 筑波大学, 数理物質科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 超伝導 / 高圧力 / ダイヤモンド / ダイヤモンドアンビルセル |
研究実績の概要 |
本年度は、超高圧力下で電気抵抗測定を行うことの出来るダイヤモンドアンビルセルの開発を目指して、主に①発生圧力の向上、②機能性の向上、③測定例の拡充に取り組んだ。 ①発生圧力の向上について、ダイヤモンドアンビルのキュレットおよびホウ素ドープダイヤモンド電極のパターンをそれぞれ微細化することにより、初年度の目標であった50GPaの圧力印加に成功した。また、減圧後に装置へのダメージが無く、大気圧と50GPaを往復可能であることも確認した。 ②機能性の向上については、ホウ素ドープダイヤモンド電極の形状を電気抵抗測定用の単純な4端子から、高圧力下キャリア密度測定用のホールバー状へと拡張し、さらに電気二重層トランジスタ構造を実現するためのサイドゲート端子も設置した。これによって、高圧力下での物性測定のみではなく、高圧力下キャリアドープなど、さらなる機能性を試料に与えることの出来る装置へと改良された。また、電極と金属ガスケット間の絶縁層を絶縁体ダイヤモンド薄膜によって実現するという次年度の計画を、先だって本年度で検討した。その結果、実際に成膜した絶縁体ダイヤモンドが絶縁層として機能することを明らかにし、装置の利便性が飛躍的に向上した。 ③測定例の拡充について、本年度は実際の機能性材料に対しても本装置を応用した。具体的には、鉄系超伝導体であるFeSeに対して、一軸圧力や静水圧力を印加することによって、超伝導特性の変化を測定した。その結果、一軸圧力を印加した際に、FeSeでは最高の超伝導転移温度であるTconset=43Kを観測することに成功した。この結果から、開発した装置は実際の超高圧力下超伝導探索で有用なツールであることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度に計画していた50GPa程度までの電気抵抗測定、また電極パターンの複雑化は順調に達成した。さらに、計画していた鉛のみならず、実際の機能性材料である鉄系超伝導体FeSeの高圧力下電気抵抗測定やヒーター用電極の開発にも成功した。さらに、2年目に計画していた絶縁層の成膜にも成功したことから、本研究課題は当初の計画以上に進展したと判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に従って、複雑化した電極パターンを利用した高圧力下ホール効果測定、また電界効果トランジスタ構造の作製を行い、圧力の印加とキャリアドープを利用した機能性材料の特性改善に取り組む。
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