研究課題/領域番号 |
17J06054
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
田辺 和 金沢大学, 医薬保健学総合研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
|
キーワード | 慢性骨髄性白血病 / 炎症性ケモカイン / 細胞間競合拮抗 / 数理モデル |
研究実績の概要 |
慢性骨髄性白血病(CML)の治療時に再発の原因となっている残存白血病幹細胞の根絶を達成するために、骨髄移植治療時の移植細胞および白血病細胞の細胞動態を中心に生理的条件下における骨髄細胞の増殖の数値化・数式化および、白血病における白血病幹細胞の増殖の数値化・数式化ついて解析を行い、以下の結果を得た。 ①CCL3阻害による優位な正常造血幹・前駆細胞再構築を促せることが明らかとなった。得られたデータより数理モデルの作成を行った結果、CCL3の特異的レセプターを欠損した骨髄細胞は一定の割合で優位な増殖率を持っているモデルを適応することで非常によく相関した数式が得られた。 ②マウスCMLモデルに対して、野生型マウスの骨髄細胞をドナーとした骨髄移植治療を行い、骨髄内に残存した白血病幹細胞の動態を実測し、数理モデルの作成を行った結果、放射線照射量依存的に白血病幹細胞は減少し、低い白血病細胞の割合を保ったのちに、白血病細胞の割合を増加し死に至る再発過程を再現できることが明らかになった。 以上の結果から、骨髄移植治療後の残存している白血病幹細胞とドナー正常造血細胞の増殖率はそれぞれが一定であると仮定でき、二種間には細胞間競合的な競争が働いており、2種競争数理モデルが適応されることで最終的にはどちらかが優位になることが明らかになり、残存した白血病幹細胞およびドナー細胞の骨髄移植治療時の初期細胞数の条件によって、白血病幹細胞が根絶できるかどうかが決定される可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書の研究計画に記載した、29年度予定の骨髄移植後の正常造血細胞及び白血病細胞の増殖の数理モデル化は、正常造血細胞において、CCL3の特異的レセプター・CCR1およびCCR5を遺伝子欠損した骨髄細胞が骨髄移植後に一定の優位な増殖率を持つと仮定して数理モデル化を行うことで、実験データと相関した結果を得られていることから、妥当性の高い数式が得られたと考えられる。また、白血病細胞において、マウスCMLモデルに対し種々の放射線照射量で骨髄移植治療を行った結果、放射線照射量依存的に残存した白血病細胞の割合が減少することが認められ、想定していた通り、2種競争数理モデルが適応されることが明らかになった。以上の結果から、骨髄移植治療時の動態を数理生物学的にシミュレーションすることが可能になったため、予定通り遂行できたと評価している。
|
今後の研究の推進方策 |
29年度の研究から、骨髄移植後の正常造血細胞において、CCL3の特異的レセプターを欠損した骨髄細胞は一定の割合で優位な増殖率を持ち、骨髄移植後の白血病幹細胞とドナー正常造血細胞の増殖率は一定であると仮定でき、二種間には2種競争数理モデルが適応されることが明らかになった。したがって、今後の方針としては、申請書の30年度の研究計画に記載した通り、29年度に得られた数式から骨髄移植後の残存している白血病幹細胞を十分に減少させられる放射線照射量を予測し、野生型およびCCL3の特異的レセプターを欠損した骨髄細胞を骨髄移植治療に用いて、白血病の治療・再発予防効果の検討を行う。また、野生型骨髄細胞で骨髄移植治療後にCCL3特異的レセプターを阻害する薬剤の投与による同様な検討を行う。本研究計画を遂行する上で必要な、CCL3レセプター遺伝子欠損マウスは所属研究所動物実験施設で飼育維持している。また、CCL3阻害活性を示す低分子阻害剤マラビロクもすでに入手済みである。
|