研究課題/領域番号 |
17J06070
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
大澤 友紀子 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1) (80909200)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 温熱制御 / 熱伝搬 / 温熱感覚呈示 |
研究実績の概要 |
本研究では温熱技術を用いた人間支援技術の構築に向けて、高臨場温熱覚を呈示するための分布熱インタフェースの実現を研究目標としている。 従来開発された温熱覚呈示デバイスは温熱呈示部分が他システムと完全に独立しており、人間への装着や他システムとの統合が困難であった。また複数の熱源を表面の分布熱流と捉え、統一的に制御する手法は構築されておらず、繊細な温熱覚を呈示することにはあまり焦点を当てられていなかった。 そこで本年の研究では、実現が困難であった温熱覚インタフェースのウェアラブル化や呈示範囲の拡張を実現すべく、装着型のサーマルインタフェース(サーモグローブ)を開発した。本インタフェースは手にはめられるグローブ型になっており、2つのグローブにそれぞれ2つの熱源が埋め込まれている。グローブの指先に埋め込まれた熱源を各グローブで連動して動作させることにより、2つのグローブで感じた「熱い」・「冷たい」という温熱感覚を共有することができる。 さらに、仮想的に設けた分布熱コンダクタンスを制御することにより、手のひらの温度分布を自在に変化させることに成功した。これにより、複数熱源の熱伝搬を用いた分布熱制御を構築し、呈示範囲を拡張した繊細な温熱感覚呈示が可能となった。ホットコーヒーとアイスコーヒーを交互に持つ実験を行い、左右のグローブにおいてその熱い・冷たい温熱覚を共有できること、さらに缶を持ったときの温度分布について共有できることを示した。 また温熱技術を用いた在宅医療に向けた、熱流による深層熱源の検知手法を開発した。本手法は、サーモグラフィでは検知が困難である、表面に異常のないがんの検知などへの応用を目指している。 以上のように、温熱技術を用いた人間支援技術の構築に向けたデバイス設計論とそれに伴う制御理論について、研究成果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、温熱覚呈示のためのデバイス設計論およひ制御理論をそれぞれ構築することであったが、研究を推進していく中でデバイス設計に合わせた制御理論を見出した。 温熱覚呈示デバイスのウェアラブル化や多自由度化を行うことで、手のひらでの温度分布を自在に呈示するための分布熱制御について工学的に理論構築ができたため、当初の研究計画を上回る成果が得られた。したがって、今年度は期待以上の研究の進展があったと判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は前年度確立した制御理論をマルチモーダル感覚呈示システムに応用させる前段階として、時空間の熱伝搬における制御理論の一般化を行う。 熱分野では放熱や減衰など独特の特色が存在するため、提案する理論のコアな部分と熱に限定される部分を明確に分離し、他システムへの応用を可能にする。 温熱感覚呈示技術を時空間の観点から他感覚呈示技術と結びつけ、マルチモーダル感覚呈示システムとしての学問体系の創成を目指す。
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