研究課題/領域番号 |
17J06075
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西森 加奈 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 交互共重合 / 配列 / スチレン / マレイミド / 精密重合 / 配列制御 |
研究実績の概要 |
タンパク質やDNAなどの天然高分子が配列由来の高度な機能を発現しているように,合成高分子でも配列を制御することによって機能性材料の機能向上や新しい機能発現が期待されている。しかし,これまで材料開発に結びつくような有用な配列制御法はほとんどなく,最も単純な配列である交互配列由来の機能でさえ配列に基づく機能創出の例はほとんどない。 このような背景の下で本研究では,電子リッチなモノマーと電子プアーなモノマーの組み合わせで進行する交互共重合に着目し,この交互共重合を基盤とした高分子の構造・配列を精密に制御し,配列由来の機能を発現することを目的として研究を行ってきた。 本研究員はこれまで,スチレンとアルキルマレイミドの共重合に対して,選択的開始反応を実現する開始剤を開発することで,マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析装置(MALDI-TOF-MS)によって配列解析ができることを明らかにした。当該年度は上記の配列解析法を用いることで,従来まで交互共重合と考えられてきたスチレンとアルキルマレイミドの共重合体の交互配列の精度(交互性)が高くない,ということを明らかにした。 そこで,共重合体の交互性に対するマレイミドの側鎖置換基の影響を調べたところ,電子吸引性の置換基を有するマレイミドを用いると交互性が向上することを見出した。さらに,交互配列由来の機能創出を目指して,機能基導入が可能かつ高い交互性を実現するマレイミドの基本骨格を新たに設計することで,交互性が高い共重合体の合成に成功した。様々な機能基導入が可能でありながら交互性が高い共重合体が合成できるようになったことは,研究目的である交互配列由来の機能発現を今後実現するための重要な研究成果である。また,今後の研究計画である,交互配列を基盤とした新しいタイプの共重合体の合成にも重要な研究成果と言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
開始反応選択性を持つ開始剤を開発することでMALDI-TOF-MSによって交互共重合体の配列解析が可能になり,従来まで交互共重合と考えられてきたスチレンとアルキルマレイミドの共重合の交互配列の精度が高くないことを明らかにした点は,高分子化学において重要な研究成果である。また,共重合体の交互性に対するマレイミドの側鎖置換基の影響を調べ,電子吸引性の置換基を有するマレイミドを用いることによって交互性が向上することを明らかにした。さらに,置換基導入が可能で高い交互性を実現するマレイミドを新たに設計した点は,本申請研究の目的である交互配列由来の機能発現の実現に向けた大きな進展である。以上の観点から、「おおむね順調に進展している。」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,昨年度までに明らかにした交互性の高い共重合を与えるマレイミドを用いて,交互配列を基盤とした新しいタイプの共重合体を合成する。具体的には,リビング重合を用いて交互配列セグメントがポリマー鎖中の任意の場所に組み込まれたブロック共重合体を合成する。このとき,後の機能創出を見据えて,片方のモノマー側鎖を固定し,もう一方のモノマー側鎖を様々に変化させたような,新しい共重合体の合成を行う[例:(A-alt-B)n-block-(A-alt-C)m]。 さらに,合成したブロック共重合体の自己組織化挙動を動的光散乱(DLS)や小角X線散乱(SAXS)などで解析する。共重合体の配列の高い交互性と側鎖設計により,従来にはなかった新しい自己組織化挙動の発現が期待できる。
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