(1) Alの電荷密度をさらに精度を高めて決定した。Herbsteinらの式を用いて、30 Kでの熱散漫散乱の強度を見積もった。Alの金属結合による結合電子の分布を0.005eÅ-3の精度で決定した。実験観測と第一原理計算によるAlの結合電子の分布の比較により、理論で予測されていなかった原子周りの電子密度のピークを発見した。報告された強束縛近似の構造因子との比較から、このピークが原子軌道状の成分を表すことを突き止めた。以上の結果をScientific Reports誌に投稿し、掲載された。 (2) SPring-8のビームラインBL02B2で、単体金属の粉末X線回折の測定を継続して行った。試料はbcc構造のMoとした。受け入れ研究室で実施している課題への参加により、d>0.22Åの超高分解能データを測定した。 (3) 測定データを用いて、世界最高の精度をもつ197本のMoの精密な構造因子の観測に成功した。Moの電荷密度を多極子展開で決定し、Moの金属結合による結合電子の分布を明らかにした。Moの結合電子の分布から、共有的な結合軌道の電子分布やd軌道の分離による電子の欠乏を0.005eÅ-3の精度で観測した。これらの実現のため、多極子解析による回折ピークの観測強度の精密化を使用した。 (4) 2018年7月のSagamoreXIXで、Moの30Kでの粉末X線回折の測定データ、観測した構造因子、電荷密度の解析の経過を報告した。2018年11月の結晶学会で、AlとMoの金属結合の電子分布の結果と進捗を報告した。2018年12月のAsCA2018で、30KのMoの結果を報告した。
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