近年、制御性T細胞は抗腫瘍免疫に大きな影響を与えることが報告されている。しかし、腫瘍微小環境内で制御性T細胞がどのように蓄積し、腫瘍免疫に働いているのかは未だ不明な点が多い。本研究において、抑制性免疫受容体 CD300a の腫瘍微小環境における意義を明らかにすることを目的に研究を行なった。野生型及び CD300a遺伝子欠損マウスを用いて、担癌モデルで解析を行なった。野生型マウスと比較して CD300a遺伝子欠損マウスでは、腫瘍径の増大が観察され、生存率が著しく低下することが観察された。次に、腫瘍内CD8陽性T細胞より産生されるIFN-gが低下しており、in vivoの結果を支持していた。また、CD300a遺伝子欠損マウスで、腫瘍内の制御性T細胞数が増加していたことから、マウスCD300aは腫瘍免疫微小環境で制御性T細胞数を増加させ、抗腫瘍免疫応答に影響を及ぼすと考えられた。今年度では、腫瘍内におけるヒトCD300Aの機能を解析した。The Cancer Genome Atlasデータベースを用いてCD300Aの発現量と生存率を比較したところ、ヒトメラノーマ患者のうち CD300A発現が低いほど生存率が低下しており、CD300Aの発現量によって患者の生存率に変化が認められた。加えて、抗腫瘍免疫応答の指標であるIFN-gの発現とCD300Aの発現に相関があること見出した。次に、バイオインフォマティクスの解析より、ヒトメラノーマ組織に存在する免疫細胞間でのCD300Aの発現量を解析し、骨髄球系細胞にCD300Aが高発現していることを示した。
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