研究課題/領域番号 |
17J06225
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
内田 唯 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 進化発生学 / EvoDevo / 個体間差 / トランスクリプトーム / 表現型進化 |
研究実績の概要 |
脊椎動物は、発生初期・後期の形態が多様であるのになぜか中期(咽頭胚期)では非常に似通った形態をとる。近年行われた一連の比較発現解析により、分子的にも咽頭胚期の保存性は支持された。咽頭胚期の形態の保守性が脊椎動物のボディプランの源という予測もされており、「なぜ咽頭胚期は保存されるのか?」を解明することは、”形態進化への制約”へと迫る可能性もある。 本課題では、「咽頭胚期では表現型の個体間差が生じづらく、この安定性が進化的保存性に寄与している」という仮説を立てた。具体的には、「遺伝子発現プロファイルの偶然による個体間差・変異による個体間差が、咽頭胚期で最も小さいかどうか」を検証することで、仮説成立の前提条件を評価することを目的とした。 今年度は主に【遺伝子発現プロファイルの偶然による個体間差の取得】を行った。具体的には、個体の遺伝子発現状態を得るため、メダカ近交系(Hd-rR)を同一ゲノムの集団とみなし発生初期・咽頭胚期・後期でsingle embryo RNA-Seqを行った。各発生時期で20個体以上のデータを取得、RNA配列データは全サンプルで3000万リード以上・ゲノムへのマッピング率約90%でありクオリティにも問題がなく、貴重な基盤データが得られた。また、個体間差は技術誤差よりも大きく、系の実現可能性も確かめられた。さらに、マウスでも近交系(C57BL/6J )を用いサンプリングを行った。 これらのデータを用い、順次遺伝子発現プロファイルの解析を行い仮説の検証を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目に行う予定であったRNA抽出技術・個体間差取得の技術確立を達成し、2年目に行う予定であった変異によらない個体間差の計測を8対以上行っている。また、1年目に行う予定であった「ENUによる変異導入条件の検討」は、野生集団を利用するよりよい方法へと転換、データ取得に向け推進している。
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今後の研究の推進方策 |
変異導入操作なし・あり両条件において、メダカ・マウスのサンプリングをさらに重ね、統計的な判断を行う。変異導入条件においては、ゲノムリシーケンスも行い、変異の内容も確認する。個体間差を計測するために使用する正規化法・距離指標は十分に検討を行う。
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